初の女性総理誕生の裏で 「女性管理職が増えない」と嘆く企業が見落とす「数」の威力:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)
日本の政治界のトップに「女性」が就任しました。高市早苗首相は「オールド・ボーイズ・ネットワーク」による前例主義、教条主義がはびこる政治の世界に、風穴を開ける存在となるのでしょうか。
やっと、本当にやっと日本の政治界のトップに「女性」が就任しました。
「組織を変えたきゃ、若者、よそ者、ばか者を入れよ」と言われますが、高市早苗首相は「よそ者であり、ばか者」として、「オールド・ボーイズ・ネットワーク」による前例主義、教条主義がはびこる政治の世界に、風穴を開ける存在となるのでしょうか。それとも「オールド・ボーイズ」以上のボーイになってしまうのか。個人的には期待感を持つ半面、少々冷めた懸念も抱いています。
見落としている「数」の力
懸念を抱く象徴的な出来事が12年前、2013年にありました。当時、自民党は「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%以上にする」という数値目標を掲げ、政調会長に高市氏、総務会長に野田聖子氏が就任。女性を要職につけることで、「女性活躍」を印象付ける人事をしたのです。
しかし、両者が報道番組に出演した際、その数値目標に関して「女のバトル」と揶揄(やゆ)された議論が起こります。
野田氏が「強制的に枠を作らないと女性が活躍する場所が生まれてこない。まずは数を確保すること」と訴え、韓国の女性大統領誕生を例に「数」を掲げる施策の重要性を説いたのに対し、高市氏は異議を唱えました。
「女性に下駄を履かせて結果平等を作り、法的拘束力を持たせ数値目標を実行するのはあくまでも過渡期的な施策であるべき。社会で活躍する女性の絶対数を増やせば、自然と管理職も増える。法的拘束力を持たせれば、女性の絶対数が少ないので人事に無理が出る」と「数」を掲げる施策に反対の立場を取りました。
その主張は一貫して変わらず、2021年に自民党総裁選に出馬した際に掲げた“サナエノミクス”には「育児や介護をしながら働く人たちをサポート」という項目はありましたが、記者会見で「自民党総裁選に出馬した史上2人目の女性候補」であることについて問われ、「若いことと女性であるということがハンディだった時代はあったが、女性が国政・地方政界で働くことに対する理解も30年前とは全然違うくらい変わってきているので、これから増えていくと思っている」と答えるにとどまりました(ハフポスト「高市早苗氏が立候補表明。「サナエノミクス」を掲げ、女性初の首相めざす【自民党総裁選】」 2021年09月08日)。
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