「日本版AIバブル」か? データセクションに見る日本市場の熱狂と恐怖(1/3 ページ)
米空売り調査会社のレポートで株価が急落したデータセクション。しかし、大手不動産との提携発表で反発。AI株相場の脆弱性と企業戦略の攻防が鮮明になった。
筆者プロフィール:古田拓也 株式会社X Capital 1級FP技能士
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックスタートアップにて金融商品取引業者の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、広告DX会社を創業。サム・アルトマン氏創立のWorld財団における日本コミュニティスペシャリストを経て株式会社X Capitalへ参画。
10月8日、米国の調査会社ウルフパック・リサーチが“空売り推奨レポート”を公開した。その対象になったのは、AIデータセンター事業で投資家から熱視線を集めていたデータセクション(東京都品川区)だ。
レポートでは、データセクションが米国の輸出管理規制に抵触する形で、中国企業テンセントに対してNVIDIA製の最新鋭GPU「B200」の供給に関与している可能性を指摘している。事実であれば、事業継続性にも関わる深刻なコンプライアンス問題である。
そして、データセクションが計画するスーパーコンピューター事業の主要な資金提供者がテンセントである可能性を指摘し、特定の単一顧客への過度な依存という事業リスクも提示した。
ウルフパック・リサーチの狙い
この話題は株式投資になじみが薄い方にはとっつきづらいかもしれない。少し補足をしよう。
「空売り」とは、株価が下がると利益を得られる投資手法だ。投資家は証券会社から株を借りて売り、のちに安くなった時点で買い戻して返すことで差額をもうける信用取引の一種だ。つまり、「この会社の株は下がる」と考える人が行う取引である。
ウルフパック・リサーチのような調査会社は、企業の不正会計や業績の過大評価などを指摘し、「(この企業の)株価は下落すべきだ」と主張する“空売り推奨レポート”を発表することがある。同社は米国を拠点とし、過去には中国企業や米国上場企業の不正疑惑を暴いて注目を集めた。
彼らの狙いは、問題を抱えた企業を市場に警告する「公益的な面」もある一方で、株価が下がれば自身の空売りポジションによって利益を得られる「投資的な動機」もある。つまり、彼らのレポートは市場を揺さぶる強い影響力を持ち、対象となった企業の株価は短期間で大きく動くことが少なくない。
10月8日に公開したレポートの内容がSNSなどを通じて市場参加者に広まると、売りが続き、株価は10月15日には一時1500円近辺まで下落。レポート公表前の水準から大きく値を下げる結果となった。
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