2015年7月27日以前の記事
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脱「コンサル頼み」のDX 社員が自走する組織を作るには?AI・DX時代に“勝てる組織”(3/3 ページ)

あなたの会社のDXプロジェクトは「コンサル頼み」の状態に陥ってはいないでしょうか。近年、コンサルタントが社員の育成・リスキリングを直接サポートするサービスが注目されますが、不適切な手法では、むしろ組織の状態を悪化させかねません。社員が自走できる組織を作るために必要なことを解説します。

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成功の鍵は「コンサルティング力」と「育成力」のバランス

 成功する伴走支援は、プロジェクトのゴール設定から異なります。単に「何を達成するか」だけでなく「プロジェクトを通じて、誰が、どのように成長するか」という人材育成のゴールを明確に定義し、クライアントとコンサルタントが合意することから始まります。

 その上で、優れたコンサルタントは以下の3つのアプローチを柔軟に使い分けます。

ティーチングとコーチングの巧みな使い分け

 新しいフレームワークやツールの使い方を教える初期段階では「ティーチング」を中心に、メンバーが自ら課題解決に取り組むフェーズでは、問いを投げかけて思考を促す「コーチング」へと切り替える。相手の理解度や状況に合わせて、最適な支援方法を瞬時に判断します。

ファシリテーションによるチームの底上げ

 1対1の指導だけでなく、チーム全体のワークショップやディスカッションを設計し、メンバー同士が学び合う「場」を創出します。活発な意見交換を促し、多様な視点を引き出すことで、組織全体の課題解決力を高めていくのです。

目線合わせとゴール設定の徹底

 プロジェクトの初期段階で「何を目指し、どんな人材を育てたいのか」という育成ゴールを具体的に合意します。「プロジェクトの成功」と「人材育成の成功」は、必ずしもイコールではありません。この初期設定が、伴走支援の成否を大きく左右します。

本物の育成力を持つコンサルタントを見極める、実践的質問術

 では、実際にパートナーとなるコンサルタントを選ぶ際、どうすればその「育成力」を見極められるのでしょうか。提案の美しさやファームのブランド名に惑わされず、担当者本人に以下のような質問を投げかけてみてください。その答えの中に、本質が隠されています。

  • 質問1:「過去の伴走支援プロジェクトで、お客さま側の担当者がどのように成長されたか、具体的なエピソードを教えてください」
    • 見るべき点: 抽象的な成功論ではなく、担当者が「スキルアップして昇進した」「自ら新しい企画を立案するようになった」など、個人の成長に関するストーリーを語れるか
  • 質問2:「どのような場面でティーチングとコーチングを使い分けていますか?判断基準を教えてください」
    • 見るべき点: 「常に自分が教えます」といった一方的な回答は危険信号。相手の状況やフェーズに応じた指導方針の「引き出しの多さ」と「明確な判断基準」を持っているか
  • 質問3:「チーム全体の議論が停滞した際、どのようにファシリテーションして乗り越えましたか?」
    • 見るべき点: 自分の意見を通すのではなく、いかにチームの当事者意識を高め、メンバーの発言を引き出したか。場の空気を読み、チームの力を最大化させる工夫を語れるか
  • 質問4:「過去の伴走支援における最大の失敗経験と、そこから何を学んだか教えてください」
    • 見るべき点: 失敗を隠さず、そこからの学びを客観的に分析し、現在のアプローチに生かせているか。失敗から学べるコンサルタントは、予期せぬ事態にも柔軟に対応できる可能性が高い

失敗しないためのRFP(提案依頼書)作成のポイント

 こうした見極めをより確実にするために、最初の入口であるRFP(提案依頼書)の作り方も工夫しましょう。コンサルタントの育成能力を評価するための要件を、明確に盛り込むことが重要です。

育成ゴールを具体的に記述する

 「DX施策の成功」といったプロジェクト目標だけでなく、「自社メンバーがデータ分析スキルを習得し、自律的にPDCAを回せるようになる」など、育成面のゴールを具体的に明記する。

求めるスキルセットを定義する

 「業界知見」「問題解決力」といった項目に加え、「ティーチング・コーチング能力」「ファシリテーション実績」などを必須要件として洗い出し、その優先順位を示す。

アサイン予定者の経歴と面談を要求する

 提案書に、プロジェクトに実際にアサインされるメンバーの経歴や専門分野、過去の育成実績の記載を義務付ける。そして、契約前に必ず本人と面談し、前章で挙げた「実践的質問」を直接ぶつける機会を設ける。

 営業担当のパートナーが語る美辞麗句と、現場にアサインされるコンサルタントのスキルが乖離しているケースは少なくありません。実際に伴走してくれる「その人」の能力を見極めるための仕組みを、RFPの段階から組み込んでおくことが、失敗を避けるための最善策です。

DXの成否は、「誰と走り始めるか」で決まる

 DXを真に成功させるためには、ツールやテクノロジーの導入だけでは不十分で、「人材の育成」が不可欠のエンジンとなります。そして、その育成を外部パートナーと行う「伴走支援」は、正しく活用すれば強力な武器になります。

 しかし、そのためには、専門知識や問題解決スキルだけでなく、クライアントに寄り添い、その成長を心から願う「育成力」を持ったコンサルタントを選ぶという、発注側の「目利き」が何よりも重要です。

 この記事を読まれている経営者やマネジャーの皆さんは、次にコンサルタントを選ぶ際、ぜひ「育成力」という観点で見極めましょう。DXを長期的かつ継続的に成功へと導くために、パートナーの選定には十分注意が必要です。

著者紹介:小出翔

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GrowNexus代表取締役

デロイトトーマツコンサルティングにて14年間のコンサルティング経験を経て、GrowNexusを設立。

多様な業界の大手企業・官公庁・自治体に対し、人事・組織改革、新規事業創出、業務効率化の戦略策定から実行・伴走支援まで幅広く手掛ける。近年はDX推進に加え、デジタル人材戦略から採用・配置・育成・評価・処遇に至る一貫した支援を実施。経産省・IPAのデジタルスキル標準策定も支援しており、デジタル時代の人材・リスキリングに特に強みを持つ。GrowNexusの代表として、伴走・成長支援型のサービスと、テクノロジーを融合した新しいサービスを提供。

著書に『未来のキャリアを創る リスキリング』『地銀”生き残り”のビジネスモデル 5つの類型とそれらを支えるDX』『働き方改革 7つのデザイン』他。

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