脱「コンサル頼み」のDX 社員が自走する組織を作るには？：AI・DX時代に“勝てる組織”（2/3 ページ）

あなたの会社のDXプロジェクトは「コンサル頼み」の状態に陥ってはいないでしょうか。近年、コンサルタントが社員の育成・リスキリングを直接サポートするサービスが注目されますが、不適切な手法では、むしろ組織の状態を悪化させかねません。社員が自走できる組織を作るために必要なことを解説します。

[小出翔，ITmedia]

伴走支援の失敗　なぜ現場は萎縮し、育たないのか？

　では、育成能力の欠けたコンサルタントが伴走支援をすると、具体的にどのような悲劇が起きるのでしょうか。ある企業のDX推進プロジェクトで実際にあった失敗例を見てみましょう。

一方的な指示でメンバーが“思考停止”してしまった例

状況

　大手コンサルティングファームから、DXのフレームワークや最新技術に詳しいエース級のコンサルタントがアサインされた。彼の知識は豊富で、プロジェクト計画も論理的で完璧だった。

問題

　しかし、彼には「人を育てる」という視点が欠けていた。「私の言う通りにやればいい」「なぜ、できないのか」と、自分の知識や正論を一方的に押し付けるコミュニケーションが続いた。クライアント側のメンバーが意見を述べても、「それは違う」と否定してしまうことも少なくなかった。

結果

　プロジェクトメンバーは次第に萎縮し、「言われたことだけをやる」受け身の姿勢になってしまった。コンサルタントがいないと何も決められず、会議は彼の独演会と化した。

　結果的にプロジェクトは彼の力でなんとか形になったものの、終了と同時に推進力は失速。メンバーには「コンサルタントに詰められた苦い記憶」だけが残り、ノウハウやスキルが定着することはなかった。

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　このケースの問題は、コンサルタントがクライアントを「教えるべき対象」と見下し、対等なパートナーとして尊重しなかった点にあります。このような「パワハラ系コンサルタント」は論外ですが、悪気がなくても「良かれと思って」知識を押し付けてしまうタイプも同様に危険です。

　ティーチングとコーチング、そしてチーム全体の意欲を引き出すファシリテーションのバランス感覚がなければ、伴走支援は現場の主体性を奪う「毒」にさえなりかねないのです。