GPT-5が大学院生なら、楽天のAIは高校生レベル? それでも挑む“日本語特化AI”の勝算(3/3 ページ)
楽天では約3万人の社員のほとんどが、社内向けAI「Rakuten AI for Rakutenians」を日々活用。非エンジニアも含め社員自らがつくったAIツールは、日報・月報の作成や営業の育成プログラム、翻訳や開発のテスト自動化プログラムなど、すでにその数は2万を超えている。
「対顧客」向けの楽天の戦略
こうして社内で培った技術力やノウハウを詰め込み、法人向け生成AIサービスとして提供されているのが「Rakuten AI for Business」だ。
初期費用無料で、基本料金は1ユーザーにつき月額1100円、従量料金として1000文字あたり11円が発生する。楽天市場の店舗運営者や楽天トラベルで取引のあるホテル、法人のモバイル契約者など、楽天のビジネスパートナーを対象に、「まずは低価格でAIを試したい」というニーズに応えている。
楽天市場の店舗に対しては、「RMS AI Assistant」として、以下のようなAI機能群の提供も始めている。
- R-Storefront(商品管理)
商品の説明文や画像を自動生成。
- R-Messe/Review Response(コンタクト管理)
問い合わせメールやレビューに対する返信を自動生成。これまで店舗担当者が貼り付きで対応していた業務を簡略化できる。
- AI Chat(営業&オペレーション支援チャットボット)
楽天の出店・出品に関する店舗からの問い合わせ対応を、AIが24時間365日対応。
- R-Karte(データ分析)
店舗の売り上げや在庫などのグラフを自然言語で解説する。
また、楽天では国立がん研究センター(東京都中央区)との共同プロジェクトも始めており、がん患者向けに、術後の簡易診断や来院の必要性の有無などをAIで回答するサービスを提供している。これにより、AIの力で医療現場の労働力不足解消を目指す。
GPT-5が大学院卒なら楽天はまだ高校生レベル──「対消費者」の勝ち筋は?
そして今、楽天では一般消費者向けのAIサービスにも踏み出している。2025年8月に本格提供を開始した「Rakuten AI」だ。ショッピング、旅行、投資、エンタメなど、楽天が提供する既存サービスは、全て“検索”がユーザー体験の起点だった。これを将来的には「全てAIによる“会話型”の体験に置き換えていきたい」という。
「Rakuten AI」の中には、楽天AIエージェント・便利ツール・AIフレンズの3つのカテゴリーがある。楽天AIエージェントには現在、ショッピング・トラベル・ラクマ・ファッション・ミュージック・モバイルの6つが含まれており、楽天の保有する独自データを学習したAIが、会話形式で欲しい情報へとナビゲートしてくれる。
便利ツールには、AI検索・画像生成・動画生成・会話メモ・翻訳・問題解決・AIリーディング・文章作成サポート・コーディング支援がある。
AIフレンズでは、英語コーチや占い師、恋愛アドバイザーなど、さまざまな悩みを相談できる機能を提供する。
この「Rakuten AI」は、楽天モバイルユーザー向けの「Rakuten Link」アプリに搭載されているほか、ベータ版のWebアプリケーションなら、ブラウザ上で誰でも利用することができる。
このように、社内→ビジネスパートナー→一般消費者とAI活用を広げてきた楽天だが、それを下支えしているのが独自のLLM(大規模言語モデル)だ。2024年末に発表したモデルは、パラメーター数がおおよそ500億。これはChatGPTの10分の1程度の規模であり、「GPT-5が大学院卒レベルだとしたら、楽天のLLMは高校生レベルだ」という。
これをさらに進化させるには、多大なGPUリソースとエンジニアの技術力が必要となる。
楽天は経済産業省が主導する生成AIの開発力強化プロジェクト「GENIAC」に採択されており、現在は約7000億パラメータの日本語特化型LLMを開発中。順調に進めば、2026年初頭にオープンソースとして公開される予定だ。
「AI-nizationで目指すのは、単なる社内の効率化だけではない。われわれを取り巻く全てのステークホルダーを、AIでエンパワーメントしていきたい」と大越氏は展望を語った。
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