“MATCHA戦争”勃発 世界を席巻する「緑の商戦」の裏側:スピン経済の歩き方(8/8 ページ)
世界で激しい抹茶争奪戦が繰り広げられている中、「抹茶の原産国」をかけた日中の戦いも激化している。日本国内にも進出している「中国産抹茶」に対し、宇治抹茶のような日本ブランドはどう立ち向かっていくべきか。
「コメ政策」の二の舞いになるか
台頭する中国の抹茶に、日本の抹茶が負けないために何をすべきかは、農水省の官僚もよく理解している。ただ、分かっちゃいるけど実現できないのも、日本の官僚だ。
それは「コメ政策」を見れば分かる。先ほど申し上げたような、生産量を増やして輸出を目指す農作物本来の戦い方を、石破政権がどうにか道筋をつけた。
日本は「補助金を支払い、コメづくりを抑制してもらう」という、社会主義も驚くような減反政策を半世紀以上続けた結果、「補助金なしでは継続できない兼業コメ農家」を大量に生み出した。それが高齢化でさらに生産性が落ち込み、「令和の米不足」を招いた。
ようやくその誤りが正され、「コメの増産」という方針で、農家の集積・集約化が促進されていくかと思われた矢先、高市政権があっさりとちゃぶ台返しをして、国内需要に合わせた生産調整を復活させた。しかも、米価が上がったら「おこめ券」で乗り切るという。
コメ農家へのバラマキ政策が引き起こした混乱を、国民へのバラマキで解決しようという、崩壊した旧ソ連を思わせるような「悪手」だ。
これを決断した農水大臣は元農水官僚。つまり、農業政策の舵取りをする政治家やエリート官僚たちは、頭では何をしなくてはいけないと分かっているのだが、それよりも「既得権益」を守ることに腐心しなくてはいけないので結局は“絵に描いた餅”になってしまうのだ。それは「抹茶」にも当てはまる。
残念ながら近い将来、米国や欧州で「MATCHA」といえば、日本のものではなく「中国の食」になっているかもしれない。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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