「コレ、総務の仕事?」と思っても 社内対立の“仲裁役”は買ってでもやるべき理由:「総務」から会社を変える(2/3 ページ)
「総務は特定の事業部門に属さないから、第三者的に話を聞いて、落としどころを見つけてくれるだろうと期待されているんです」。この言葉に、深く共感する総務パーソンは少なくないはずだ。今回は、なぜ総務にこうした「仲介役」が回ってくるのか、この役割をどう戦略的に全うすべきかについて考察する。
仲介役は「リスク」もあるが、引き受けるべき
では、総務がこうした役割を担うことの「是非」についてはどう考えるべきなのか。もちろん、懸念点はある。
第一に「便利屋」「苦情窓口」と矮小化されるリスクだ。こうなると、あらゆる部門の言い分を聞くだけに終始し、調整に疲弊してしまう。本来注力すべき戦略的業務のリソースが奪われる恐れがある。
第二に「感情労働」としての側面も見逃せない。特に個人間のトラブル仲裁は、強いストレスを伴う。安易に引き受けることで、総務担当者自身がメンタル不調に陥っては本末転倒だ。
とはいえ、仲介役としての機能は、これからの総務にとって非常に重要であり、むしろ積極的に引き受けるべき戦略的な役割ではないだろうか。なぜなら、トラブルや対立の裏には、組織の「生きた課題」が隠れているからだ。AIには吐き出せない、未だ表に出ていない課題が拾える。
例えば、システム導入の対立は全社的なDX推進のボトルネックを示している。休職者との連携は、会社の復職支援プログラムやメンタルヘルス体制の不備をあぶり出す。些細(ささい)なオフィスの揉めごとでさえ、コミュニケーション不全や、オフィスの在り方(レイアウトやルール)の歪みを知らせるサインである。
これらは、レポート上には決して表れないリアルな経営課題といえる。総務が仲介役として、これらの課題の最前線に立つことは、組織の結節点として、より本質的な改善策を講じる絶好の機会を得ることに他ならない。
つまり問題は、トラブルや対立の「是非」ではなく、それに「どう向き合うか」なのだ。単なるお悩み相談や揉め事の仲裁で終わらず、組織課題の解決につなげる「高度なファシリテーション」へと昇華させることが、総務には欠かせない。
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