成果が出ない! “人間関係頼み”のパートナー営業を改革する方法とは?(2/2 ページ)
日本のB2B市場において、「代理店販売・代理店営業」の方式は長らく“当たり前の取り組み”として実施されてきた。しかし、多くの企業で「代理店営業の成果が出ない」といった悩みは尽きない。
「代理店営業の成果が出ない」問題 解決のヒント
パートナービジネスに携わると必ず陥る課題が稼働率の二極化である。要するに「(代理店と)契約をしたが案件を作れない」という状況だ。
代理店(パートナー)の契約社数は積み上がっているのに、案件を創出できる代理店の母数は増えず、売り上げがなかなか伸びない。パートナービジネスの現場でこうした悩みに直面している方は非常に多い。
そして、パートナービジネスにおいては、なぜ売り上げが伸びないのかを分析するデータも存在しないのが難しいところだ。
代理店は社外の組織である。ゆえに、社内の営業組織で当たり前にモニタリングできるような、リード数・商談実施率・案件状況・受注率などの情報が分からないのが一般的だ。直販であればCRMやSFA上において、「どのチームの誰の受注率が悪いのか」「リードの質が下がっていないか」といった要因分析ができる。ただ、データがなければこうした要因分析を行うことすらできない。
結果、ベンダーの打ち手は「とりあえず有効そうな施策」に寄っていく。定期勉強会を増やし、月次で資料を送り、代理店のオフィスを訪問して「何か案件ありませんか?」とお願いする。しかし、ボトルネックが見えない状態でこうした打ち手だけを進めてもなかなか状況は改善できない。
直販におけるTHE MODELの考え方と同様に、まず「見える」状態をつくることが、全ての起点となる。SFAがそうであったように、「見える」を作るのがツールであり、DXだ。逆に言えば、このDXが進まないと、代理店の販売活動が見えないままであり、代理店の稼働率を上げるための道筋を明らかにすることができないのだ。
パートナービジネスを可視化するツールとして、PRM(代理店マネジメントシステム)がある。海外では数十兆円にも及ぶという巨大市場となっており、PRMを活用したパートナービジネスの可視化が当たり前のものとして実施されているが、日本ではまだあまり浸透していないのが現実だ。
なぜこのような遅れが発生するのか。これは日本のカルチャーにあると考えている。
第一の壁は恐怖感だ。日本の代理店ビジネスは人間関係で回ってきた歴史が長い。ツールやDXなどというとその関係が壊れるのではという不安は根強く、省力化というワードが忌避される文化がある。
第二の壁は、そもそも日本の営業組織全体を覆うSFAへの忌避感だ。営業管理システムは管理者にとっては便利なツールだが、現場の営業にとっては行動管理されるだけで、入力作業も面倒だし使いたくない、という声は大きい。ベースとしてこうした営業管理システムへの忌避感があるが故に、代理店はもっと嫌がるだろうと考えてしまうのだろう。
進まない代理店営業へのIT投資
パートナービジネスのDXは本来、代理店(パートナー)への支援を強化する仕組みである。
例えば資料やトークスクリプト。代理店の現場営業は「どうすれば売れるのか」というノウハウを求めている。他の代理店がどう売っているかという情報は値千金だ。こうした情報をいちいちメールで聞くのではなく、思いついたらすぐダウンロードできる環境を求めているのではないだろうか。
案件情報も同様だ。パートナービジネスでよく問題になるのが、直販との案件バッティングチェックが必要で、スピーディーに案件を進められないことだ。PRMで可視化していれば、案件を登録すればすぐバッティングチェックをできるため、迅速な案件推進が可能となり、代理店としても無駄な待ち時間がなくなる。
海外において、このような代理店が売りやすい仕組みを作ることをパートナーマーケティングと呼ぶ。当然ながら代理店DXにおいても人が築いた関係性の価値はなくならない。人間関係を支援の仕組みで支え、再現性のある仕組みに仕立てていくのが代理店DXの勝ち筋なのだ。
しかし、先述した通り、日本国内ではパートナーマーケティングへの関心がまだそこまで高くない実態がある。
筆者が勤めるパートナープロップは、パートナーマーケティングに関する実態調査を実施した。調査では、70%の回答者がパートナーマーケティングには一定以上の価値があると回答。一方で、パートナーマーケティングの予算を増加させると答えたのは24%にとどまった。
比較として海外調査を見ると、「パートナーマーケティングに価値がある」との回答が68%と日本とほぼ同水準ながら、「予算増額意向」は62%に達しており、日本との差が顕著に見られた。この差は、パートナーマーケティングの重要性を認知しているものの、実際の投資や施策実行まで踏み切れていない日本の現状を示している。
“代理店を支援するため”に代理店DXを進めるという発想の転換こそが、今の日本の代理店ビジネスには求められているのではないだろうか。
代理店がベンダーの売り方や商材の内容をすぐにキャッチアップできて、スムーズに受注という成功体験を積むことができれば、ベンダーも代理店もWIN-WINの世界が実現できるはずだ。
筆者プロフィール:磐崎 友玖(いわさき ゆうく)
株式会社パートナープロップVP of Sales(営業統括)
大学在学時、2018年8月に株式会社Magic Moment に創業参画、BtoB SaaS 事業のマーケティング・インサイドセールス・セールス、BPO 事業のマネジメントなどを幅広く担当、シリーズ B 資金調達(累計22.4億円)まで事業拡大を経験。数々の営業組織を支援。
その後、2024年10月に株式会社パートナープロップに VP of Sales (営業統括)として参画、アライアンス開拓・直販営業組織立ち上げ・マーケティング・広報などを幅広く推進。
公式Webサイト:パートナープロップ
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