AIを経営会議に“同席”させる 富士通が始めた、“意思決定を先送りさせない”方法とは?(3/3 ページ)
富士通は“人間レス”を前提とした業務オペレーションの再設計と、AIの恩恵を最大限に享受するための“AI-Ready”なデータ整備、そして組織文化の変革を目指している。
「SaaSをバラバラに管理しては危険」 自社で“AIの主権”を握るべき理由
「AI活用の成熟度を高めるために必要なのは、AIの精度よりも“AI-Ready”な環境の整備だ」と福田氏は強調する。システムがバラバラで、データの定義がそろっていなかったり、精度にばらつきがあったりすれば、どれほど高性能なAIがあっても使い物にならない。
そこで富士通が進めているのが、社長がプロジェクトリーダーを務める「One Fujitsu」である。これは、合理的・迅速な意思決定を支える「リアルタイムマネジメント」、経営資源のend to endでの「データ化・可視化」、グローバルでの「ビジネスオペレーションの標準化」の3つを重点施策に据えた“経営プロジェクト”だ。
例えば、グローバルのグループ全体で60種類も存在していた購買システムを1つに統合するといったように、分散していたシステムを「OneERP+(基幹業務)」「OneCRM(顧客管理)」「OneSupport(サポート)」「OnePeople(人事)」「OneData(データレイク)」という形で、富士通全体の共通基盤として統一する。これにより、業務プロセスの標準化とデータの一元管理を図り、“AI-Ready”な状態へと近づけるのだ。
「あと1年半か2年ほどで、富士通は完全に正規化・標準化されたデータで埋め尽くされる。AIがそのまま使えるデータで満ちあふれる日を、とても楽しみにしている」(福田氏)
しかし、いくらOne Fujitsuで領域ごとに1つのシステムへ統合しても、現状60種類近いSaaSが稼働している。各SaaSには、それぞれのベンダーが開発したAIが搭載されているが、こうした複数のAIがバラバラに動いたままにしておくのは、大いに問題がある。AIごとに倫理基準やセキュリティ水準が異なれば、リスクの把握や管理も煩雑になり、全社的なガバナンスを効かせることが難しくなるからだ。
「自社がしっかりとAIの主権を握るべき」と考える富士通では、自社開発のAIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」を開発した。Fujitsu Kozuchiが果たすのは、複数のSaaSに搭載されたAIをオーケストレーションしながら、富士通のAIとして足並みをそろえさせる役割である。
このように、真のAI経営を実現できる環境を着実に整えている富士通だが、こうした取り組みを進めるうえで気を付けていることとして、福田氏は次のように語った。
「現場に頼るばかりでは、変化は起きない。リーダーシップが介入し、制度設計や予算配分などの後押しをしなければならない。また、AIを十分機能させるには、従来の仕組みの延長線上で、業務にAIをプラスする発想ではダメ。AIを前提とした業務プロセスや人材育成、マネジメントの在り方まで、再設計する心構えが必要だ。そのうえで、人間がやりたいこと・やるべきことを特定し、それ以外は徹底的に“人間レス”を追求することが大切ではないだろうか」
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