「日中関係の悪化」で仕事はどうなる? 900万人が不安を感じる“もしも”の話:スピン経済の歩き方(1/7 ページ)
高市首相と中国政府の間で、引くに引けない「謝ったら負けレース」が繰り広げられている。もし日中関係が今後さらに悪化した場合、日本のビジネスへの影響は――。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。
日本と中国の間で「怒りと不信感」の火がくすぶり続けている。
高市早苗首相が国会で台湾有事について「存立危機事態になりうる」と発言したことを受け、中国の薛剣(せつ けん)在大阪総領事がXで「その汚い首は一瞬のちゅうちょもなく斬ってやる」と投稿(現在は削除)。この発言を巡って互いに引くに引けない「謝ったら負けレース」が繰り広げられているのだ。
中国にとって2025年は「抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年」という、日本の侵略に対抗した節目のタイミングである。台湾に首を突っ込むことは、中国側の認識では「内政干渉=侵略」にあたるため、これを厳しくどう喝しなければ中国共産党のメンツは丸潰れだ。体制批判にもつながり、口が裂けても日本に「悪かった」とは言えない。
また、薛剣氏が所属する中国外交部は2021年、安倍晋三元首相が台湾で講演して「台湾有事は日本有事」と発言したときも「挑戦すれば必ず頭が割れて血が流れる」と強い言葉でクギを刺している。「元首相」に頭を割ると脅しているのだから、「現役首相」に対しては「首を斬る」くらい脅さなければカッコがつかない。
一方、高市首相も答弁撤回は難しい。各メディアの世論調査で80%前後という異例の支持率を獲得している理由のひとつには「強いリーダーシップ」が期待されているからだ。中国のどう喝にひるんだとなれば「浅はか」「弱腰」などと叩かれ、この先に控える解散総選挙にも暗雲が立ち込める。対中強硬姿勢に心酔してついてきた保守派から愛想を尽かされるリスクもある。
こういう双方の“オトナの事情”を踏まえると、日中関係はさらに険悪になっていく可能性が高い。そこでビジネスパーソンの皆さんが気になるのはやはり、「もしそうなったら私のビジネスにどんな影響があるの?」ということではないか。
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