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既存SaaSは“食われる側”にいる──AI時代の新しい稼ぎ方とは(1/3 ページ)

創業1年半で50回のプライシング変更、前払いチケット制で超過分は倍額――。AI時代のSaaS企業が直面する「マネタイズの試行錯誤」の実態が、11月12日に開催されたZuoraの顧客イベントで赤裸々に語られた。

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 創業1年半で50回のプライシング変更、前払いチケット制で超過分は倍額――。AI時代のSaaS企業が直面する「マネタイズの試行錯誤」の実態が、11月12日に開催されたZuoraの顧客イベントで赤裸々に語られた。

 「SaaS is Dead」(SaaSの終焉)――。汎用的なAIエージェントがさまざまなソフトウェアを自在に操り、業務を遂行する。そんな未来が現実味を帯びる中、シリコンバレーを中心に、こんな言葉が囁(ささや)かれるようになった。

 SaaS各社も危機感を強める。国内スタートアップであるHacobu、PeopleX、ゼロボードの3社が登壇したパネルディスカッションからは、SaaS is Dead時代に対する各社の受け止めと、従来のサブスクリプションモデルを超えた新時代の収益化戦略が浮かび上がる。

AI時代の“プライシング”はこう考える

 「もともと1面接当たり2000円だった。それを強化して3000円にした」。PeopleXの橘大地CEOは、主力のAI面接サービスの価格設定について、こう切り出した。創業1年半で、プライシングを50回変更してきたという。

 現在の価格体系は、月額7万円または15万円の基本料金に、1面接当たり3000円を加える仕組みだ。さらに最低契約金額は300万円に設定し、顧客には1万面接分のチケットを前払いで購入してもらう。このチケット分を超過した場合、1面接当たりの単価は5000円に跳ね上がる。

 なぜこれほど複雑な設計にしたのか。橘氏は「毎月変動すると、日本の購買部署は対応できない」と説明する。完全従量課金は、日本企業の商習慣には合わない。年間予算を事前に確保する必要があるからだ。

 前払いチケット制は、この制約を逆手に取った戦略である。顧客は予算管理がしやすく、PeopleX側は安定収益を確保できる。

 超過分を5000円に設定したのには別の狙いがある。「超過すると割高になるので、最初から多めに前払いで買ってもらうセールストークがしやすい」


PeopleXの橘大地CEO(編集部撮影、画像左)

 価格の基準は「人間の時給の半額」くらいだと説明する。人間が面接を行う場合、外部委託で1面接当たり約1万円かかる。その半額なら、顧客にとって導入メリットは明白だ。ただし、グローバル展開では新たな課題が生まれる。

 「(時給水準を考えると)ベトナムだと3000円は高い」。橘氏はパネルディスカッションで、Zuoraの創業者兼CEOティエン・ツォ氏に質問を投げかけた。

 ツォ氏の回答は端的だった。「B2B SaaSなら、国によって別の価格でいい。現実として、国によって支払い能力は異なる」。ただし、大手多国籍企業が相手の場合は、価格の統一性がより重要になるという。

 こうした試行錯誤の中で見えてきたものがある。従量課金が機能する条件と、機能しない条件だ。

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