AI導入のカギは「行動変容」 ソニーグループが実践した、“現場が使いたくなる仕組み”とは?:AI時代の「企業変革」最前線(4/5 ページ)
ソニーグループは2023年から全社員の生成AI活用を推進し、わずか2年で5.7万人が日常業務で使う体制を整えた。同社では、日々15万件の推論が実行されている。
「AIを使い倒す」──新テクノロジーの活用と内製、両軸で取り組む
中出: 今後もどんどん新しいAIのアプリケーションが出てくると思うのですが、それらを積極的に使っていくのか、使いながらも自社である程度構築していこうとしているか、どちらの方向性なのでしょうか?
大場: 結論からいえば、両方です。私たちは、ユースケースに合わせて適切にAIツールを選択し、使い倒すことが重要だと考えています。社内外にこだわりはなく、最も効果的な組み合わせを重視するベストオブブリード戦略を基本としています。
ただし、現時点において一般的にAIは高コストであるのも事実です。そのため、全社員で共有可能な一般業務用のAIツールについては、一定の規律をもって標準化。規模を拡大し経済性を高めて賢く導入しつつ、ノウハウを共有して徹底的に使い倒すべきだと考えています。
これは私たちが提供するGenerative AI Platformについても同様で、汎用性や共有性の高い機能、例えばLLM機能のAPI提供や、一般的なユースケースに対応するAI Agent機能などは、共通プラットフォーム化することで経済性とAI活用効果のバランスを取り、継続的にAIが適用できるビジネスシーンを増やすことも狙っています。もちろん、ソニーグループだからこそ求められるAIニーズというものもありますので、プラットフォームの経済性を生かした内製も重要な選択肢です。
AI技術の進化は速く、応用範囲も日進月歩で拡がっています。今後は業務領域や特定の産業に特化した、優れたAIツールやAI Agentが増えると見込んでいます。一方で、プロダクトライフサイクル的にはまだまだ不安定な時期が続き、賢くピボットすることも重要だと考えています。そのため、適材適所で良いAIツールを適切に早く利用可能にすることも、本社組織の重要なミッションだと考えています。
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