「ボケ! お前、アホか」 伊澤タオル、交野市役所の“衝撃パワハラ事件”から学ぶべき教訓(3/5 ページ)
コンプライアンスの違反事例の中でも、多いのがパワーハラスメントだ。直近でも、東証スタンダードへ上場した伊澤タオルや、はたまた交野市役所という公共の職場でも衝撃の事例が明らかになった。
なぜ、パワハラは起きるのか
なぜパワハラは起きてしまうのでしょうか。基本的要因は、先の認定基準(1)があって、その上で(2)(3)を生み出しているケースがほとんどではないでしょうか。多くは、上司の部下に対する優越的な関係が行き過ぎてしまい、パワハラに転じてしまうのです。
伊澤タオルのようなオーナー系企業では、経営者が雇用の諾否や給与、勤務地に関する人事権の全て掌握しているケースが多く、組織内におけるその権力は絶大になります。その強力な力関係を背景として、気に入らないことがあると、有言、無言の形で人事権をチラつかせながら強権を発動する、というケースが非常に多いのです。
過去のパワハラ系の不祥事をみても、伊澤タオルと同じような構図がみてとれます。
例えば、近年に大問題化した中古車販売大手のビッグモーター(現:WECARS)のケースでは、創業家の2代目副社長(当時)が優越的地位に基づいて、社員に降格、左遷、解雇などをチラつかせながら、無理難題を投げつけていました。顧客車両を故意に傷付けさせて自社の成績になる損害保険の不正請求をさせたり、街路樹に除草剤をまかせて枯らさせていたりしたのです。世間を震撼(しんかん)させた一連の不祥事を生んだのは、強力なパワハラのなせる業だったのです。
パワハラが横行する組織では、例え間違った指示命令であろうとも、言いたいことが言えない環境が無言で引き受けざるを得ない状況となり、さらなるコンプライアンス違反事象を生み出す負の連鎖に陥るのです。言いたいことが言えない組織は、心理的安全性を欠く組織です。誰もが誰に対しても言いたいときに言いたいことが言える組織であることが、心理的安全性が確保された状態であり、不祥事の発生を未然に防ぐ組織なのです。
その意味では、自己の職場で心理的安全性が確保されていると感じられるか否かが、組織におけるパワハラ有無のバロメーターでもあるといえるでしょう。
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