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「即戦力採用」はもはや無理ゲー 30代を“使い捨て”する企業の愚河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/3 ページ)

職場に30代がいない……。「30代クライシス」が浮き彫りになりつつあります。そんな不足感も関係してか、企業の9割が「即戦力となるプレイヤー」を30代の中途入社者に期待していることが分かりました。空いた穴を中途社員で埋めるだけで、果たして良いのでしょうか?

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中途社員を生かす2つのポイント

 一方で、中途採用は企業に新しい風を吹き込む機会であり、働く人にとってもキャリアパスを増やす絶好のチャンスです。そこで企業に求められるのが、組織社会化への理解と、オンボーディングの実践です。

 組織社会化とは、新しいメンバーが組織の価値観、規範、スキル、知識、そして行動パターンを学習するプロセスで、具体的には、

  • 自らに課せられた仕事を遂行する
  • 同僚や上司と良好な人間関係を築く
  • 組織文化、組織風土、組織の規範を受け入れる
  • 組織の一員としてふさわしい属性を身に付ける

 ことが課題で、組織社会化に成功した個人はその後、順調なキャリアを重ねられます。「即戦力」への過剰な期待は、この組織社会化の時間を奪い、新しく入った中途社員に孤立無援の状況を強いることになってしまうのです。

 そこで欧米で進められているのが、この組織社会化のプロセスをオンボーディング(Onboarding)に組み込む方法です。オンボーディングの目的は、中途社員が前職のスキルや経験を組織との「つながり」の中で最大限に発揮できる状態へと導くこと。オンボーディングを実践することで、本当に組織を牽引する人材が育成され、離職率を低下させることが可能になります。企業が取り組むべき活動は、以下の2つの柱に整理されます。

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提供:ゲッティイメージズ

(1)カルチャー・オンボーディング(知識と文化の共有)

 組織の「暗黙知」を意図的に開示し、中途社員が効率よく協働できるようにする仕組みです。

  • 企業が目指す方向性の徹底と価値観の共有
  • 部署ごとの「仕事の進め方の流儀」の明文化
  • 組織固有の意思決定のプロセスの開示
  • 成功事例の背景にある価値観と、それを体現するための行動パターンの共有

 これらを言語化し、中途社員が習得する機会を企業は提供してください。

(2)信頼関係の「設計」と「構築」(人的サポート)

 これはバディ(同僚)制度やメンター制度を通じて、中途採用の社員が孤立しない環境を意図的に構築する仕組みです。共に助け合い、成長できる「COMPANY」(仲間)としての相互依存関係を根付かせるための人的な投資と考え、企業は多方面から中途社員が人的サポートを受けられるシステムを作ってください。

 そして、社内のメンバーおよび当人に、入社後3〜6カ月といった一定期間は、短期的な売り上げや成果の創出を最優先とせず、「人間関係の構築」を最優先の目標と位置付け、組織文化への適応を繰り返し伝えることを繰り返し伝えてください。

河合薫氏のプロフィール:

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 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)、『働かないニッポン』 (日経プレミアシリーズ) 、『伝えてスッキリ! 魔法の言葉』(きずな出版)など。

 新刊『「老害」と呼ばれたくない私たち  大人が尊重されない時代のミドル社員の新しい働き方』(日経BP 日本経済新聞出版)発売中。


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