沖縄はなぜファミマが強い? 全国3位の激戦区で「V字回復」を実現した独自戦略:沖縄ファミマの勝ち筋【前編】(1/4 ページ)
沖縄ファミマが面白い取り組みを次々と展開している。セブンの進出で競争が激化した中で、なぜ首位をキープできているのか?
業界内での出店競争が激しくなるほど、1店舗当たりの収益は縮小していくのが市場の常だ。それを打ち破っているのが、沖縄エリアでコンビニエンスストアのファミリーマートを展開する「沖縄ファミリーマート」(那覇市、以下「沖縄ファミマ」)である。
同社はファミリーマートと沖縄県で百貨店などを運営するリウボウグループの共同出資会社で、1987年に誕生した。沖縄県でファミリーマート店舗の運営と店舗拡大を担うエリアフランチャイズ本部という位置付けであるため、独自にさまざまな施策を展開しやすい特徴がある。
2019年7月、国内コンビニチェーン最大手のセブン-イレブンが“最後の空白地”として沖縄に進出した。ファミリーマートとローソンの2強時代から一気に競争環境が熾烈さを増し、同年6月時点で全国45位だった人口10万人当たりのコンビニ数は、2025年3月時点で全国3位にまで跳ね上がった。
競合の激化とコロナ禍で沖縄ファミマの売上高は一時落ち込みを見せたが、その後V字回復を果たし、2024年度には過去最高の826億円を記録。これまでは2019年度の807億円が最高値だった。2025年度の6月までの累計で、1店舗当たりの平均日商もファミリーマートの全国平均より10万円ほど高い69万円。かつてない高水準を更新している。店舗数はセブン進出前から変わらず、県内トップのままだ。
乱世に突入したこの6年余り、沖縄ファミマはどのようにして競争力を高めてきたのか。キーワードは「地域ド密着」と「betterの連続」。経営戦略本部長を務める岸本国也取締役に話を聞いた。
「奇をてらったことはやっていない」
「当時はちょっと強がった発言をしていた気はしますけど、緊張感はありましたよね」――岸本氏は、セブンが沖縄に進出した6年前をそう振り返る。
それも当然だ。当時はコロナ禍前夜で、沖縄の入域観光客数は2019年に初めて暦年で1000万人を突破。全国45位の密度だったとはいえ、消費人口の増加に合わせて店舗数が徐々に増え、ローソンとの競争は年々激しさを増していた。そこに国内最大手が加われば、客が分散するのは目に見えている。
実際、2社の牙城に割って入ったセブンは独自戦略の「ドミナント(高密度集中出店)方式」を沖縄でも徹底し、2025年10月に早々と県内200店に到達。2位のローソン(2025年2月末現在で263店舗)を猛追する。石垣島、宮古島、久米島、伊江島と離島にも出店するファミリーマートは337店舗。結果、セブン進出前に全体で550店ほどだった沖縄のコンビニ数は、現在約800店にまで急増した。
そんなシビアな局面でも成長を続けた沖縄ファミマは、何か特別な対策を打ったのか。答えは「奇をてらったことは特にやっていません」(岸本氏)。
どんな業界にも言えることだが、劇的に変化する経営環境を乗り切るウルトラCはそうそう無い。岸本氏は「私たちは地元の方に何度も利用してもらうことが一番重要です。出店場所の選定、商品開発、イベントの質をさらに深めていきました」と淡々と説明する。
もともと強みにしていた地域密着の独自路線をさらに進化させるべく、2023年からは「地域ド密着」というパンチの効いたスローガンを打ち出す。「ファミンチュ」(沖縄ファミマを愛する人たちを示す造語)を増やすため、店舗と利用客の間にある“二つの距離”をさらに縮めていった。
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