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なぜ、沖縄のプロバスケチームは"日本一"観客を集められるのか琉球ゴールデンキングスの躍進(1/3 ページ)

沖縄のプロバスケチーム「琉球ゴールデンキングス」は、日本一観客を集める。離島県で人口も150万人ほどなのに、なぜそんなにも人気があるのか? 運営会社の沖縄バスケットボールの白木享社長に話を聞いた。

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 創設から8シーズン目を迎え、スポーツビジネスの業界で年々存在感を増している男子プロバスケットボールリーグ「Bリーグ」。

 競技力や人気の向上とともに、全体の経営規模も拡大の一途を辿っている。1部、2部に当たるB1、B2の2022-23シーズンのクラブ営業収入は前シーズンの299億6200万円に比べて38.6%増の415億3600万円となり、初めて400億円台に達した。

 昨夏に沖縄県などを舞台に行われたFIBAワールドカップで日本代表が活躍し、48年ぶりに自力でオリンピックの出場権を獲得した快挙は記憶に新しい。強烈な追い風を受け、今季の2023-24シーズンは過去に類を見ない程の“バスケブーム”が到来しており、多くのクラブが平均入場者数を伸ばしている。


FIBAバスケットボールワールドカップでの日本代表の活躍は記憶に新しい(株式会社東京ニュース通信社プレスリリースより)

 リーグの伸びしろに対する期待感は大きく、DeNA(川崎ブレイブサンダース)やMIXI(千葉ジェッツ)、セガサミーホールディングス(サンロッカーズ渋谷)、NOVAホールディングス(広島ドラゴンフライズ)、バンダイナムコエンターテインメント(島根スサノオマジック)など、リーグが発足して以降、さまざまな業界の有力企業がクラブ経営に参画していることも成長を後押しする要因の一つだ。

 昨シーズンは営業収入のうち、「スポンサー収入」も前期比36.5%増の237億5800万円と大きく伸びており、企業からの関心の高さがうかがえる。

 そんな中、チケットの売り上げなど、チーム経営における“地力”の高さを示す「入場料収入」で際立った存在感を放つクラブがある。沖縄県を本拠地とし、国内初のバスケ観戦に特化した施設である「沖縄アリーナ」をホームコートとする琉球ゴールデンキングスである。


バスケ観戦に特化した沖縄アリーナでプレーする琉球ゴールデンキングスの選手ら(画像:沖縄バスケットボール提供)

 昨シーズンの全体の営業収入は23億7597万円でリーグ3位だったが、そのうちの入場料収入は10億1466万円となり、リーグ史上初めて10億円を突破。B1の24クラブのうち、入場料収入がスポンサー収入を上回っているのは琉球ゴールデンキングスのみ。

 1993年に開幕し、Bリーグに比べて歴史が長いJリーグ1部(J1)の2022年シーズン決算において、入場料収入が10億円を超えたのは多い順に浦和レッズ、川崎フロンターレ、横浜F・マリノスの人気3クラブだけだったことからも、この数字がいかに大きいかが分かる。

 人口150万人にも満たない離島県が本拠地ということは、集客において明らかに不利性を抱えている。にもかかわらず、なぜこれほどの成果を挙げられるのか。背景にある独特な経営戦略について、沖縄バスケットボールの代表取締役社長、沖縄アリーナの代表取締役会長の白木享氏に取材した。


2022年に沖縄バスケットボール株式会社の代表取締役社長に就いた白木享氏。新たな挑戦を続ける琉球ゴールデンキングスの経営をけん引する(画像:沖縄バスケットボール提供)

人口が少ない離島県で「Bリーグ最多の集客数」記録 なぜ?

 「沖縄をもっと元気に!」という活動理念に掲げ、運営会社である沖縄バスケットボールが2006年に設立され、翌2007年に旧bjリーグ(2016年にNBLと統合してBリーグがスタート)に参入した琉球ゴールデンキングス。

 初年度こそ地区最下位に沈んだが、2年目の2008-09シーズンにいきなり頂点まで駆け上がった。以降、西の強豪としての地位を確立し、bjリーグが存在した2015-16シーズンまでの計8シーズンでリーグ最多4度の優勝を達成した。

 2016年にBリーグが発足し、全体のレベルが上がってからも存在感は健在だった。2021-22シーズンに準優勝、翌2022-23シーズンには悲願の初優勝を果たした。その強さや、地域密着で地道に積み上げてきた知名度が下支えとなり、沖縄県民に愛される球団としてbjリーグ時代からトップクラスの人気を誇る。

 現在レギュラーシーズンの最終盤に差し掛かっている2023-24シーズンにおいては、今年2月18日時点のリーグ公表数字で平均入場者数は7724人でB1、B2を通して最多。2番目のアルバルク東京が5902人だったことからも、いかにリーグの中で集客力が際立っているかが伝わるだろう。


琉球ゴールデンキングスの強みを語る白木氏

 白木氏は、琉球ゴールデンキングスの集客力の高さとして3つの要因を挙げる。

  1. チームが常に強い状態であること
  2. 街づくりなど地域振興に対する高い意識
  3. 競技を“観る”ための施設である沖縄アリーナの存在

 中でも沖縄アリーナの存在は極めて大きい。琉球ゴールデンキングスのホームタウンである沖縄市が、県経済の活性化を目的に内閣府の沖縄振興特定事業推進費や防衛省の再編推進事業補助金などを活用して建設し、2021年4月に完成した。総事業費は約162億円に上る。


琉球ゴールデンキングスのホームコートである沖縄アリーナ。昨夏にはFIBA男子ワールドカップ予選ラウンドの会場にもなった

 コザ運動公園内にある旧ホームコートの沖縄市体育館は収容人数が約3500人だったが、沖縄アリーナは約8500人。もともと毎試合満員になり、チケットの入手が困難な状況が恒常化していたため、キャパシティの拡大で潜在客が表面化した。

 開業した2021年4月時点はコロナ禍で入場制限があったが、解除されてからは堅調な数字を残し続けている。今年4月6日に行われた強豪・千葉ジェッツとのホーム戦ではクラブ主管試合としてはレギュラーシーズン最多の8557人を集めた。

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