沖縄はなぜファミマが強い? 全国3位の激戦区で「V字回復」を実現した独自戦略:沖縄ファミマの勝ち筋【前編】(4/4 ページ)
沖縄ファミマが面白い取り組みを次々と展開している。セブンの進出で競争が激化した中で、なぜ首位をキープできているのか?
自治体コラボにも注力「互いにメリットがある」
「心理的距離」を縮小する上では、県内企業とのコラボレーション企画や地域貢献活動も効果が大きい。協賛する男子プロバスケットボール「Bリーグ」の琉球ゴールデンキングスとのコラボ店を2カ所展開したり、県民のソウルフードとも言える「沖縄天ぷら」が人気の上間沖縄天ぷら店の商品を販売したりと、取り組みは多彩だ。
中でも近年注力するのは、2023年の那覇市を皮切りにスタートさせた自治体やその地域の地場企業と連携したコラボ企画である。2024年には沖縄市、2025年にはうるま市と立て続けにタイアップしている。各自治体にある名店、名産品を活用した商品を多数開発し、県内全店舗で一斉販売する。うるま市編では、もずくや闘牛モチーフの商品など20アイテム以上を開発した。
自治体側にとっては、その市町村に行かなければ出合えない味や店を県内全域で発信できるメリットがある。さらに収益の一部は子ども支援活動の費用として自治体に寄付され、期間中は元トップアスリートを招いた授業「夢の教室」を市内小学校で開催するなど関連企画は多い。
地域貢献の色合いが強い企業活動は赤字覚悟なことも少なくないが、沖縄ファミマ側もプロジェクトを通じて毎回利益が確保できているという。岸本氏は「私たちには『沖縄を元気にする』というミッションがあるので、自治体を盛り上げる企画には力を入れています。お互いにメリットがあるからこそ続けられるプロジェクトだと思います」と評価する。
沖縄ファミマは、さまざまな角度から「地域ド密着」を深掘りしている。地元の自治体やプロスポーツチームを応援したい、ファミリーマートに行けば慣れ親しんだ味がある、入りやすい場所に店舗がある……。心理的、物理的距離を縮めることで、「ホッとする」「ワクワクする」といった情緒的価値を積み重ね、結果的にファミンチュが増えていくという循環を作り出しているのだ。
本記事では、全国3位のコンビニ激戦区で躍進を続ける沖縄ファミマの強さの源泉を紹介した。後編では、同社の成長を支える上で欠かせない要素の一つである「人材と組織のあり方」を深堀りしていく。
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