「予約を取りこぼす」ことも トヨタレンタリース岡山が電話応答率を「60→90%」へ改善させた方法(1/3 ページ)
トヨタレンタリース岡山では、20年以上前から予約センターを設置し、全店舗の電話対応を集約している。しかし、店頭応対と電話業務の両方を担う現場は混乱しており、応答率は60%にとどまっていた。取り逃した電話の中には、予約依頼の電話もあった。
「電話がつながらない」──このような顧客の”不満”は、多くの企業にとって深刻な課題だ。
特にレンタカー業界では、予約や問い合わせの電話対応が顧客満足度を左右するが、限られた人員で増加する電話に対応し続けることには限界がある。電話に出られないことは、顧客の不満に直結するだけでなく、予約機会の損失にもつながる。
こうした課題に対し、AIを活用した電話対応システムの導入で応答率を大幅に改善した企業がある。トヨタレンタリース岡山だ。
同社の予約センターには毎月5000件程度の問い合わせが寄せられていたが、店頭応対と電話業務の両方を担う現場は混乱しており、応答率は60%にとどまっていた。取り逃した電話の中には、予約依頼の電話もあった。
「予約センターなのに、予約の電話がつながらない」という悪循環に陥っていた──トヨタレンタリース岡山 レンタル部部長の劒持徹氏と、レンタル部企画係係長の西林尚美氏はこのように振り返る。
同社はこの問題にAIを活用して取り組み、応答率を60%から90%へ改善させた。改革の裏では、「顧客と直接対話できる電話を、機械に任せていいのか」と葛藤もあったという。
本稿では、トヨタレンタリース岡山のコンタクトセンター改革の舞台裏に迫る。
IVRyが11月20日に開催したカンファレンス「Voice to Value 2025」内のセッション「人とAIの最適な役割分担とは?〜応答率90%を達成したトヨタレンタリース岡山のハイブリッド型CX戦略〜」の内容を一部抜粋して紹介する。
「予約を取りこぼす」ことも 月5000件の電話、対応しきれなかった現場
トヨタレンタリース岡山は、1971年に設立した、今期55期を迎える老舗のレンタカー会社だ。同社では20年以上前から予約センターを設置し、全店舗の電話対応を集約している。劒持氏はその背景をこう説明する。
「当時は、店舗で電話を取りながら、来店されたお客さまの応対をしていました。そのため、職員へ大きな負荷がかかっていました。そこで、店舗で分散するのではなく、予約センターで一括で受けるシステムを作ったのです」(劒持氏)
この体制は年々定着し、オペレーションもスムーズになっていった。しかし、近年のレンタカーの需要拡大の中で、新たな課題が浮上してきた。
予約センターには月に約5000件の電話がかかってくるが、4〜5人のスタッフで対応していた。5000件のうち、実際の予約につながる電話は約半数。それ以外のほとんどは、店舗への取り次ぎ依頼だった。予約業務に集中できない状況が続いていた。
「取り次ぎ電話の件数が多すぎて、全ての電話を取り切れない状態でした。取りこぼしてしまった電話の中には、予約依頼の電話もありました」(西林氏)
その他にも、予約センターには忘れ物の問い合わせや、精算明細書の再発行依頼などもかかってくる。これらの問い合わせは件数自体は少ないものの、時間はかかる。当時の応答率は60%程度と、「予約センターなのに、予約の電話がつながらない」という悪循環に陥っていた。
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