2025年「人手不足倒産」が過去最多 “耐えきれない”企業に共通する傾向とは?
東京商工リサーチ情報本部と日本経済新聞は「人手不足」で倒産リスクが高まった企業を分析。過去のデータをもとに、リスクの高い「人手不足倒産予備軍」について解説した。
人手不足が企業を直撃──倒産件数が増え、重大な経営リスクに浮上している。
東京商工リサーチが実施した調査では、2025年1〜10月に発生した人手不足による倒産は323件に達した。前年同期比から30.7%増加で、同社が調査を開始した2013年以降で年間300件を超えるのは初めてのこと。
地域に必要不可欠な企業が倒産する恐れも
同社は日本経済新聞と共同で、人手不足が理由で倒産リスクが高まった企業の傾向を分析。そこから「人手不足倒産予備軍」となる企業を調査した。
まずは基準作成のため、2020年1月〜2025年6月までに人手不足で倒産した企業について、「過去の売上高」「当期利益」「正社員数」の数値を抽出。それらの企業の倒産直前から過去3期を遡った「売上指数」「当期利益率」「平均従業員数」を分析した。その結果、3期前と比較して売上指数が8.45ポイント減、当期利益率が1.70ポイント減、従業員数が14.28ポイント減という指標を算出した。
算出した基準を満たす企業を「人手不足倒産予備軍」と定義したところ、2024年度は企業全体の2.47%が該当した。産業別にみると、最も比率が高いのは建設業の3.43%。農・林・漁・鉱業2.49%、製造業2.40%、情報通信業2.38%と続く。
5年ごとの推移を見ると「人手不足倒産予備軍」比率は上昇しており、過去10年で0.7ポイント増加している。
都道府県別の「人手不足倒産予備軍」では、北海道、東北、九州で予備軍比率が3%を超える都道府県がみられる。関東、中部、近畿の3大都市圏は比較的比率が低くなっている。2014年度から2024年度にかけての比率の伸びをみると、岩手県3.60ポイント増、山形県2.17ポイント増、福島県2.14ポイント増、宮城県2.0ポイント増と東北が上位に並ぶ。
東京商工リサーチは「地域に必要不可欠な企業・業種にもかかわらず、賃上げ遅れで人材をつなぎとめられず倒産や廃業に追い込まれるケースが増えるとみられる」としており、賃上げが遅れる業種やエリアからの人材流出にどのように歯止めをかけるか、入念な検証が必要とコメントしている。
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