「自治体システム標準化」は、なぜここまで迷走するのか? 現場で見えた2つの“ボタンの掛け違い”(2/4 ページ)
今回は「自治体システム標準化」と「ガバメントクラウド移行」をテーマに考察したい。自治体のCIO補佐官として現場から見えてきた現状と、どこでボタンを掛け違えてしまったのか、これまでの経緯を振り返る。
コスト増、遅延、品質不安――自治体ごとに異なる“しわ寄せ”の実態
筆者はいろいろな自治体で「自治体システム標準化」と「ガバメントクラウド移行」の現場を見てきました。筆者は全ての自治体に一律の対応を助言しているわけではなく、状況に応じて方針を変えています。
小規模自治体で深刻化する「コスト増」
筆者が関与する自治体で最も規模の小さなところは、すでに標準システムをガバメントクラウドに移行して運用を開始しています。ただ、この自治体は規模が小さいがゆえに「コスト増」の影響が大きく、深刻化しています。またシステムのレスポンス性能が向上しておらず、やり場のない不満がくすぶっています。
また、ある中核市では、事業者から提示されたシステム移行費用が別の同規模の自治体に比べて著しく高額であるとして、コスト精査を行っていますが、そもそも事業者から提示された費用の根拠も曖昧(あいまい)であり、協議は平行線のままです。
ある自治体では、2025年の夏頃から事業者の作業進捗報告が滞り始めて、現在までに2回、移行スケジュールの変更を通告されました。事業者内のエンジニアが不足していて、既存の顧客である自治体全てに手が回らないとのことです。2025年度末のシステム切り替えは断念していて、新システムの本番稼働は2年後になりました。ガバメントクラウドでの稼働ができてないのにもかかわらず、クラウド接続回線のコストだけがかかる状況です。
ガバメントクラウド運用を見送った自治体も
既存システムの状況を踏まえてコスト比較を丁寧に行った結果、あえて新システムをガバメントクラウドで運用しない決断をした自治体もあります。皮肉なことに、近隣の同規模自治体と比べて全体のコストが半額以下に抑えられました。
一方で特殊な事情から、システム事業者を探しているものの見つからない自治体もあります。従来のシステムを開発していた事業者が、自治体標準システムの開発には参画しないことを決め、事業撤退してしまうケースです。新システムを担う事業者を探しても、どの事業者も人手不足で、なかなか新たな受託先が決まらないという声が聞かれます。
こうした状況の中、12月2日に開催された財政制度等審議会では、令和8(2026)年度予算編成に関する建議が示され、その中で自治体DXや自治体システム標準化、ガバメントクラウド移行に言及がありました。
その内容は現場から見ると「表面的な認識にとどまっている」感が否めません。財政制度に関する審議会で扱うさまざまな議題の中の一部に過ぎず、仕方ない面はあるでしょう。とはいえ、状況の認識にすらギャップが生じているのは問題です。
そこで、筆者なりの視点と体験から、「自治体システム標準化」と「ガバメントクラウド移行」のどこでボタンの掛け違いが生じたのかを考えてみます。
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