「廃虚アウトレット」の乱立、なぜ起こる? 絶好調なモールの裏で、二極化が進むワケ:【2025年メガヒット記事】(4/4 ページ)
業績を大きく伸ばすアウトレットがある一方で、ほとんど人も来ず、空きテナントだらけのアウトレットが増えている。その原因は何なのか?
閉鎖されるアウトレットモールも……
ここまで紹介した例は、運営母体を変えたり、運営方法を工夫したりして、かろうじて事業を継続している。
しかし、中にはそのまま営業を停止してしまった例も多くある。
「大洗リゾートアウトレット」のかつての運営母体「八ヶ岳リゾートアウトレット」は、その名の通り、八ヶ岳地域でもアウトレットモールを展開していた。しかし、大洗と同じように2023年6月に営業を停止。跡地には会員制ホテルが建てられる予定だという。
他にも、新千歳空港の近くにある「千歳アウトレットモール・レラ」も、新千歳空港内のショッピング施設や、北広島市に誕生した「三井アウトレットパーク 札幌北広島」の存在によって経営不振に陥り、2024年11月に事実上、運営終了となった。現在はわずか4店舗のテナントしか入っていない。
先ほども述べた通り、基本的には立地と大きさが重要になってくるアウトレットモールでは、必然的に大手デベロッパーにより開発されたモールが優位性を持つ。そんな中、良い立地を確保できなかったモールや中小事業者によるモールは、急速に淘汰(とうた)されているのだ。
日本ショッピングセンター協会のWebサイトでは、現在のアウトレットモールの数は31施設となっている。 ただ、この数字は「物販テナントが10店舗以上ある」もので、いわば「勝ち組モール」といえるものである。振るわないアウトレットモールには、物販テナントが10店舗に満たないものも多い。そのため、「廃虚アウトレットモール」は、日本のさまざまな場所に、ひっそりとあることが予想される。
「アウトレットの売上高、過去最高!」といった景気の良いニュースの裏には、多くの「デッドモール」が潜んでいるのである。
著者プロフィール・谷頭和希(たにがしら かずき)
都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。チェーンストアやテーマパーク、都市再開発などの「現在の都市」をテーマとした記事・取材などを精力的に行う。「いま」からのアプローチだけでなく、「むかし」も踏まえた都市の考察・批評に定評がある。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』他。現在、東洋経済オンラインや現代ビジネスなど、さまざまなメディア・雑誌にて記事・取材を手掛ける。講演やメディア露出も多く、メディア出演に「めざまし8」(フジテレビ)や「Abema Prime」(Abema TV)、「STEP ONE」(J-WAVE)がある。また、文芸評論家の三宅香帆とのポッドキャスト「こんな本、どうですか?」はMBSラジオポッドキャストにて配信されている。
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