なぜ叩かれなかった? AIイラストの「嫌悪感」、コロプラ新作ゲーの“かわし方”がうまかった(2/2 ページ)
コロプラは5月に、画像生成AIを活用したゲーム「神魔狩りのツクヨミ」をリリース。創造的な分野での生成AI活用には反発も生まれやすいが、同社の挑戦はいかにユーザーに受け入れられたのか。
「真の神」と「偽の神」に込めたクリエイターへのリスペクト
「しかし、やはりファンにとって最も嬉しいのは、金子さん自身が手がけたイラストであるということは理解していた。そのため、ゲームの設定にも工夫を施している」と齋藤氏。
ゲームでは、金子氏が実際にデザインを手がけたキャラクターを「真の神」、AIカネコが生成したキャラクターを「偽の神」という立ち位置にすることで、クリエイターへのリスペクトを表している。
「神魔狩りのツクヨミ」では、リリースから2カ月時点で累計160万種もの“金子風”カードが生成された。これは人力換算だと2億5600万時間を要する数であり、1日24時間働くと仮定しても、金子氏が約17.8万人必要な計算になる。
また、AIカネコが生成する画像の中には、クオリティにバラツキが見られているが、ユーザーの間ではそれすらも「これは金子っぽい」「これは金子っぽくない」などと楽しむ要素の一つになっているという。
さらに、SNSではユーザーが投稿した生成画像に対して、金子氏本人がコメントするといったコミュニケーションも生まれている。
完成したものをユーザーが一方的に消費するのではなく、クリエイターとユーザーが共に生成の過程を体験し、語り合う──コンテンツの楽しみ方そのものを拡張した事例と言える。
「AIを活用するリスクはもちろんあるが、今回の事例で見せ方や設計を考えた上で作ったものはユーザーに受け入れてもらえることが実証できた。今後も新しい体験を提供できるよう、AIを使ったエンタメを発展させ、挑戦を続けていきたい」(齋藤氏)
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