なぜ叩かれなかった? AIイラストの「嫌悪感」、コロプラ新作ゲーの“かわし方”がうまかった(1/2 ページ)
コロプラは5月に、画像生成AIを活用したゲーム「神魔狩りのツクヨミ」をリリース。創造的な分野での生成AI活用には反発も生まれやすいが、同社の挑戦はいかにユーザーに受け入れられたのか。
本稿は、12月11日に日経BP、Generative AI Japanが開催した「『生成AI大賞2025』最終審査・表彰式」の内容を一部抜粋・編集した。
「AIが描いたイラストは“ズルい”」「それはクリエイターへの冒涜(ぼうとく)ではないか」──創造的な分野での生成AIの使用には反対意見も根強く、リスクを伴う。とりわけ、熱狂的なファンを多く持つエンタメ領域では、クリエイターへのリスペクトが大きい分、反発も生まれやすい。
このリスクに正面から向き合ったのが、スマートフォンゲームなどを提供しているコロプラ(東京都港区)だ。
“AIはエンタメ領域で受け入れられない”──本当か?
同社は5月に、ゲーム内で生成AIがカードイラストを生み出すという仕組みを取り入れたゲーム「神魔狩りのツクヨミ」(じんまがりのつくよみ)をリリース。12月時点でApp Storeで星4.7、Google Playで星4.4を獲得しており、ユーザーからは「期待通りの世界観でゲーム性が面白い」「AI生成でオリジナルカードを作れるのが素晴らしい」などのコメントも見られており、さらには「生成AI大賞2025」にてグランプリを受賞した。
なぜ、コロプラの挑戦はユーザーに受け入れられたのか。
「神魔狩りのツクヨミ」は、スマートフォンとPC向けで公開されているゲーム。プレイヤーは、異形の存在「神魔」とカードゲーム形式で戦いながら、ダンジョンを進んでいく。本ゲームの特徴は、ゲーム内で使用するカードをAIが生成し、プレイヤーは自分だけのオリジナルカードで戦うことができる点だ。
「作家性の欠如」をどう乗り越える?
AIが日々発展する中、コロプラではAIを活用することで、これまでにない体験を提供できないか検討を進めていた。
「AI活用に否定的な意見も多い領域で、いかにエンタメとして昇華させるかが一番の課題だった」と開発プロデューサーの齋藤ケビン雄輔氏は話す。開発チームで課題を洗い出した際には、AIの活用が「作家性の欠如」と受け取られ、ユーザーから批判が集まるのではないかという懸念も上がったという。
それでは、作家性のあるAIならどうか──議論を重ねる中で同氏らがたどり着いた答えが「作家と一緒にAIモデルを作る」というアプローチだった。
白羽の矢が立ったのは、コロプラに在籍するゲームクリエイターの金子一馬氏。「真・女神転生」シリーズや「ペルソナ」シリーズなど数々の作品に携わり、多くのファンを持つ著名クリエイターだ。
生成AIを使ったゲーム開発の構想を金子氏に話したところ、「生成ゲー?おもしろそう!やってみよう!」との前向きな回答が。こうして、本人が学習を施した金子氏公認のAIモデル「AIカネコ」が誕生した。
ゲーム内では、AIカネコが“金子風”のオリジナルカードイラストを無限に生成する。ユーザーに対して、世界で1枚しかないオリジナルカードが手に入るという付加価値を提供した。
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