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“正解のない”クリエイティブをAIは教えられるか デジハリの「作品講評」サービス、その効果とは?

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本稿は、12月11日に日経BP、Generative AI Japanが開催した「『生成AI大賞2025』最終審査・表彰式」の内容を一部抜粋・編集した。


 「クリエイティブには正解がない」──。

 これはデザイナー、映像ディレクター、イラストレーターなど、クリエイティブに携わる人々が長年向き合い続けている課題だ。その問いはいま、クリエイターを育てる教育の現場にも突き付けられている。

 クリエイターの育成機関であるデジタルハリウッド(東京都千代田区)は、この問題にAIで挑んだ。

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「Ututor」の事例は「生成AI大賞2025」にて「優秀賞」を受賞した(筆者撮影)

時間が足りない、評価が難しい……教育現場のリアルな課題

 同社は、デジタル×クリエイティブ領域に特化した学びを提供。3DCG、Webデザイン、動画、グラフィックデザインといったデジタルコミュニケーション分野で教育事業を展開しており、これまでに約10万人の卒業生を輩出している。

 「人材を育成する中で課題となっていたのが“フィードバック”だった」と話すのは入学事務局マネージャーの笹野貴史氏。講師は「担当する学生数が多く、一人一人の指導に十分な時間を確保できない」「評価が抽象的になりがちで、フィードバックの均一性が維持できない」といった課題を抱えていた。一方、学生からは「質問したいタイミングで相談ができない」といった声が上がっていた。

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「生成AI大賞2025」最終審査でプレゼンするスクール事業部 入学事務局マネージャーの笹野貴史氏(提供:Generative AI Japan)

 この課題を解決するため同社は、生成AIに特化したソリューションを提供するneoAI(東京都千代田区)と学生作品へのフィードバックを支援するAIサービス「Ututor」を開発した。

ほめて伸ばし“表現したい気持ち”を育てるAI

 Ututorは、「CG」「動画」「Web」「グラフィック」の4分野で展開しており、分野特有の表現手法や評価軸に沿ったフィードバックをAIが提示する。学生が必要な情報を入力して作品をアップロードすると、「良い点」「改善すべき点」を表示。教育現場で蓄積したノウハウを活用し、改善点を提示するだけでなく、良い点はほめることで、学生のモチベーションや学習意欲を維持・向上させている。

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「良い点」「改善すべき点」を具体的に提示する(「生成AI大賞2025」最終審査プレゼン資料、提供:デジタルハリウッド)

 また、技術面の評価に加えて、作品の「ストーリー」や「世界観」へのフィードバックも得られる。採点機能もあるので、自身の成長を定量的に可視化することも可能だ。評価軸は、同社に蓄積された教育の知見をもとに設定した。

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「ストーリー」「世界観」へのフィードバックイメージ(「生成AI大賞2025」最終審査プレゼン資料、提供:デジタルハリウッド)

 Ututorは、デジタルハリウッド独自の学習システム内に設置しており、その他の教材とも連携していることから、評価の結果、不足しているスキルがある場合はおすすめの教材が提示される。表示をクリックすれば教材動画などが再生されるので、余計な手間がかからないという。

 正解のないクリエイティブの領域をAIで評価する上で重きを置いたのが「クリエイターの表現したい気持ち、創造力を育てる」という点。「声かけ」などのコミュニケーション方法や、次のアクションへのつなげ方といったメソッドをneoAIと共に綿密に設計し、“コーチング”のような役割を果たすことを目指した。

「個性に向き合う時間が増えた」導入の手応え

 Ututorは6月から一部の受講生・学生を対象に検証を進め、10月から本格的に導入を開始。利用者を対象に実施した調査では、52.9%が「とても参考になった」と回答した。

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「ストーリー」「世界観」へのフィードバックイメージ(「生成AI大賞2025」最終審査プレゼン資料、提供:デジタルハリウッド)

 受講生からは「クリエイティブのアイデアが浮かんだら即座にフィードバックがもらえるので、モチベーションを保ちやすい」、講師からは「AIが基礎的なフィードバックを担ってくれるおかげで、学生・受講生一人一人の個性に踏み込んだアドバイスをする時間が増えた」との声がある。 

 アップデートの構想もあり、卒業後、どのような学びやスキルアップを続けるべきかを提案する機能なども実装を予定している。

 「答えを提示するだけの存在ではなく、表現を引き出しながら一緒に人材を育てるパートナーとして、今後も進化させていきたい」と笹野氏は意気込みを話した。

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