なぜ、ハーゲンダッツは「12月でも売り上げが落ちない」のか? 41年続く”冬の女王”の販売戦略(3/3 ページ)
なぜ、ハーゲンダッツは冬でも売れ続けるのか? 冬にも強い販売戦略を聞いた。
限定品は付加価値をつけたネーミングも
ハーゲンダッツのメインターゲットは「F1層」(20〜34歳の女性)だ。「独身も多く自分のためにお金を支出できる世代」といわれ、広告業界では最も重視される層に当たる。同社が訴求するテレビCMもF1層を意識してきた。例えば、現在放映中の「ガナッシュショコラ」のCMでは、韓国のガールズグループ「TWICE」のSANAさんを起用した。
現在のハーゲンダッツは、男女問わず幅広い世代に親しまれているが、F1層に届ける姿勢は一貫している。「購買層の6〜7割が女性で、頑張った自分へのごほうびや何かの時の癒しとして買われる方が多いです」という。
今年の夏は「JAPAN MIND」(伝統的ながらも洗練された日本の良さをアイスクリームで表現する)を掲げ、期間限定品としてジェラートのミニカップ「CREAMY GELATO いちご練乳みるく」「同ほうじ茶きなこ」を、さらに「玉露」、クリスピーサンド「ゆずホワイトショコラ」を発売した(現在は「ゆずホワイトショコラ」以外は販売終了)。
最近のアイスには一歩踏み込んだネーミングも多い。
「付加価値をつけるためにこだわったネーミングにするケースもあります。市場では濃厚感を示す“大人の”をつける商品も増えました」
前述の「グリーンティー」は石臼で茶葉を挽いて抹茶の風味を引き出しているのが特徴の商品だ。発売当時の1996年は米国本社にも伝わりやすいネーミングだったが、近年のインバウンドの抹茶ブームを見ると、今なら商品名が「抹茶」になったかもしれない。
帰省する子ども一家のために大量購入
冒頭で紹介した「12月に最も市場シェアが高まるブランド」を支えるのは、ギフト需要もある。
「今でも紙媒体のギフト券が強いのですが、若い世代のカジュアルギフト需要もあるので、スマホやタブレットで受け取れる、SNSギフトなども用意しています」
あまり知られていない購入例としては、こんなケースもある。12月には、地方在住の2人暮らしの高齢夫婦が買いだめすることも多いという。年末年始に実家に帰省する息子や娘一家、特に孫に食べてもらうために常備しておくのだ。ブランド上陸時に39歳だった人も今では80歳。自分たちが食べてきた商品としてなじみがあるのだろう。
マーケティング業界では「インビジブル・ファミリー(invisible family)」=見えざる家族といわれる消費活動だが、ごほうびアイスとしてのブランド人気を裏付ける。
好調なハーゲンダッツの課題は何か、最後に聞いてみた。
「今の子どもたちには、ハーゲンダッツは生まれた時から身近にあり、食べ慣れた味です。ショップで買っていた大人のような体験をしておらず、なぜプレミアム感があるのかは知りません。お子さんが成長して自分のお金で買っていただけるかも今後の課題です」
F1層も世代交代していく。未来の顧客づくりはブランドとしての使命だ。
著者紹介:高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
日本実業出版社の編集者、花王の情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、企業の経営者や現場担当者の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例・ブランド事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。
「20年続く人気カフェづくりの本 ―茨城・勝田の名店『サザコーヒー』に学ぶ」(プレジデント社)、「なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?」(同)、「カフェと日本人」(講談社現代新書)、「『解』は己の中にあり」(講談社)、「日本カフェ興亡記」(日本経済新聞出版社)など著書多数。 E-Mail: k2takai@ymail.ne.jp
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