SaaSだけでは勝てない──SmartHR社長が語る タレントマネジメント市場、生き残りの突破口(3/4 ページ)
人的資本経営の掛け声のもと、多くの企業がタレントマネジメントシステムを導入してから5〜6年。「本当に使えているのか」と問い直す動きが広がっている。労務管理クラウドでは7年連続シェア首位のSmartHRだが、タレントマネジメント領域ではカオナビやタレントパレットを追う立場だ。「2026年を勝負の年」と位置付ける同社の戦略を追った。
SmartHRの回答は「民主化」
こうした状況に対し、SmartHRは「タレントマネジメントの民主化」を掲げる。人事部や経営層だけがアクセスできたデータを、現場マネジャーにも開放する狙いだ。
「僕らが持っている体系的なデータを、適切な権限のもとに、必要に応じて引き出せる世界を作りたい」と芹澤氏。こうした世界観の中で、AIの役割は「サーチとまとめ」だ。
「AIが『この人をこう育成すべきだ』と提案するのではなくて、問い合わせるのは人間」。マネジャーが問いかけ、AIがデータを横断分析して返す。「最終的にタレントマネジメントをするのは人間。そこはAIにはできない」。能動型ではなく受動型で、労務管理で培った7万社のデータ基盤を生かし、現場にまでアクセスを広げるという。
ただし民主化には壁がある。データだ。
「AI活用には何よりデータが必要だと分かってきた」と芹澤氏は2025年を振り返る。「データを貯めるところをもっと頑張らないといけないと立ち返り、努力してきた1年だった」
問題は、誰もタレントマネジメントのためにデータを入力しないことにある。
芹澤氏は「評価やサーベイなど必ずやる行為がある。ここを効率化すれば自動でデータが貯まる」と話す。つまり、日常業務の副産物として、データが蓄積される仕組みを作る戦略だ。
2025年、SmartHRは効率化領域で成果を上げた。書類撮影で自動入力されるOCR機能や、就業規則をAIに学習させ、問い合わせに自動回答する「AIアシスタント」はいずれも好評だ。
だがタレントマネジメント領域は「今年、それほど大きな進展はなかった」と芹澤氏は認める。「来年からはタレントマネジメントの民主化に向けて舵を切る。そこへの投資は増やしていく」。データ分析基盤の構築、それを活用したアプリケーション開発──2026年、SmartHRは本格的な攻勢に出る構えだ。
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