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マネーフォワード、「共食い覚悟」のAI新サービス SaaSの“大前提”をあえて捨て、何を狙うのか(1/3 ページ)

マネーフォワードは11月25日、AIが確定申告業務を担う新サービス「マネーフォワード AI確定申告」のβ版の提供を開始した。既存サービスの顧客を奪う可能性がある中、それでも投入する狙いとは。

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 マネーフォワードは11月25日、AIが確定申告業務を担う新サービス「マネーフォワード AI確定申告」(以下、AI確定申告)のβ版の提供を開始した。たまった領収書をアップロードするだけで、AIが自動的に申告内容を作成する。既に20万超の事業者が利用する既存の確定申告サービスとの競合を覚悟の上で、7月の企画開始からわずか5カ月で開発した。会計知識のない個人事業主でも、平均12時間超かかる確定申告作業を10クリック程度で完了できるという。

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提供:ゲッティイメージズ

既存サービスの顧客を奪う可能性も、それでも投入するワケ

 今回のサービスは、既存の「マネーフォワード クラウド確定申告」(以下、クラウド確定申告)の顧客を奪う可能性がある。ターゲットユーザーが一部重複するからだ。ビジネスカンパニーCSOの山田一也執行役員も「一部対象ユーザーが被っている部分も正直ある」と認める。

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「マネーフォワード クラウド」プロダクトラインアップ(マネーフォワード提供)

 クラウド確定申告は順調に成長を続けており、2022年11月期に10万8000事業者だった有料課金数は、3年で20万を超えている。それでも新サービスの投入に踏み切った。

 「マネーフォワードがスタートアップであり続けることを考えると、生成AIという新しいテクノロジーが出たのであれば、多少カニバってもそれを活用した新しいプロダクトを作って、ユーザーや社会に価値を届けていきたい」(山田氏)

 背景には「イノベーションのジレンマ」への危機感がある。既存の成功したビジネスが新技術への対応を遅らせる現象だ。既存事業が好調なほど、それを侵食しかねない新技術への投資をためらってしまう。しかし、自社が動かなければ他社が先に動く。そうなれば結局、既存顧客を奪われることになる。

 実は、個人事業主向けの確定申告ソフト市場で、マネーフォワードは弥生、freeeに次ぐ3番手。既存サービスは法人向けのアーキテクチャがベースで、会計知識のない個人事業主の「簡単に終わらせたい」というニーズには応えきれていなかった。

 マネーフォワードは今年5月の経営合宿で、生成AIのインパクトについて経営陣で議論していた。「これを活用してバックオフィスをもっと効率化できるのではないか」。ただ、中堅企業向けにはまだ精度が足りない。一方で、個人事業主向けなら実用に耐え得る。そこで7月、マネーフォワード初のAIネイティブプロダクトとして個人事業主向けの確定申告にターゲットを絞った。

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