マネーフォワード、「共食い覚悟」のAI新サービス SaaSの“大前提”をあえて捨て、何を狙うのか(2/3 ページ)
マネーフォワードは11月25日、AIが確定申告業務を担う新サービス「マネーフォワード AI確定申告」のβ版の提供を開始した。既存サービスの顧客を奪う可能性がある中、それでも投入する狙いとは。
「AIが主役、人が補佐」という転換
AI確定申告は従来のサービスと何が違うのか。マネーフォワードは「AIネイティブプロダクト」と位置付ける。山田氏によれば「AIが仕事の中心になるプロダクト」であり、AIが主役となり、人が補佐する関係性を指す。
従来のSaaSでは、人間が業務を行い、システムがそれをサポートする。人間が主役で、システムは脇役だった。一方、AIネイティブプロダクトでは、AIが自律的に業務を行い、人間の役割はAIに書類を渡すことと最終チェックに限られる。
クラウド確定申告では、取引履歴を取得しても、勘定科目の選択や金額確認は人間が作業しなければならない。AI確定申告では書類をアップロードして、最後にチェック・確認するだけ。「確認したくない」と思う人は、確認する必要すらない。
AI確定申告の企画が浮上したのは2025年7月のこと。開発開始が8月、11月25日のβ版リリースまでわずか5カ月だった。企画浮上から2週間でコンセプト立案やAIモックアップによる価値検証を行い、開発プロセスにもAIを活用することで、この異例のスピードを実現した。
AI確定申告ではあえて、チャット型のインターフェースは採用しなかった。確定申告はタスクが明確なため、「最初からユーザーのすべきことを画面に提示したほうが分かりやすい」と判断したからだ。AIの活用方法は、必ずしも対話型である必要はなく、業務の性質に応じて最適なインターフェースを選ぶべきだという設計思想が貫かれている。
開発では「シンプルさの徹底」を最優先した。会計の専門用語を排除し、「勘定科目」を「カテゴリー」と呼び、家計簿アプリの延長線上で理解できる表現にとどめた。AIが判断した理由も平易な言葉で示し、会計知識のないユーザーでも安心して使える設計にした。領収書をアップロードするだけで、10クリック程度で確定申告の準備が完了する。
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