中国が切った「レアアース」というカード 日本企業への影響を読む:世界を読み解くニュース・サロン(3/3 ページ)
高市首相の国会答弁に端を発した中国の対抗措置は、レアアースの事実上の輸出規制にまで及んでいる。規制が長引けば、日本企業に深刻な影響を与える。一方、別の供給源を確保する取り組みも進んでおり、事業の安定のためには中国依存からの脱却も必要だ。
中国依存度を下げる取り組みも進む
その後、日本企業と政府は、レアアースの中国依存度を下げる取り組みを継続してきた。南鳥島沖に眠る大規模なレアアース泥の開発や、オーストラリア企業のライナス・レアアースとの提携がその一例だ。総合商社の双日は2025年10月、オーストラリアで採掘されたレアアースの輸入を開始したと発表している。
2025年10月の日米首脳会談の後には、レアアースの日米共同開発の枠組みなどを確立し、重要鉱物を確保することで合意した。2026年1月からは、地球深部探査船「ちきゅう」が水深6000メートルの海底から、レアアース泥の試掘を始める予定だ。ただ、本格的な商業採掘までには、まだ1年ほどかかると見られている。
レアアースを外交カードとして使う中国に対し、日本企業が取れる選択肢は限られる。米国や欧州などと手を組み、別の供給源の確保などを進めて対抗していくしかない。とにかく中国依存から脱却できなければ、日本企業は安定した事業計画を描けなくなる。
現在、中国は高市首相の発言撤回を求め、経済・ビジネス面での圧力を強めている。ただ、拳を振り上げた中国側にとっても、それをいつ、どのように下ろすかは難しい判断だ。「商務部公告 2026年第1号」では、明確に「レアアース」を名指ししていない曖昧な表現となっており、中国政府の裁量次第で規制の強度を調整できる余地が残されている。
こうした中、日本国内で浮上した衆議院の解散総選挙という政治日程そのものが、企業にとっては不確実要因となっている。一方、日中関係を事実上リセットする契機になる可能性も否定できない。
国の基盤は経済であり、それを支えているのは民間企業だ。日本企業の事業環境を守ることは、結果として国益にもつながる。政権には、選挙を通じて国民の信任を得た上で、企業活動への影響を見据えた戦略的な対中政策が求められている。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)、『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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