中国が切った「レアアース」というカード 日本企業への影響を読む:世界を読み解くニュース・サロン(2/3 ページ)
高市首相の国会答弁に端を発した中国の対抗措置は、レアアースの事実上の輸出規制にまで及んでいる。規制が長引けば、日本企業に深刻な影響を与える。一方、別の供給源を確保する取り組みも進んでおり、事業の安定のためには中国依存からの脱却も必要だ。
中国のレアアースが規制されると何が起きるか
日本企業の間では、中国がどこまで規制を強化するのか読み切れない状況が続いていた。こうした中、外務省関係者は筆者の取材に対し、次のように語っている。
「高市首相の発言以降、中国の外交部を中心に反発は続くと考えていたが、旧正月(春節)以降には、中国側の言動はある程度落ち着くだろうと見ていた。それだけに事実上のレアアース規制まで行うとは思わなかった」
実際、すでに影響は出始めている。筆者が知る、レアアース関連の輸入に携わる事業者によると、中国からの輸出には早くも規制が行われているようだ。
野村総合研究所の試算では「レアアースが本格的に輸出規制されれば、3カ月で6600億円の経済損失」になるという。サプライチェーンでの調達が滞ることで特に影響を受けるのが、自動車や半導体など日本にとって重要な産業分野である。規制強化が続けば続くほど、日本企業がネガティブな影響を受けることは間違いない。
もっとも、中国による対日レアアース規制は初めてではない。2010年、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件を受け、中国は日本向けレアアース輸出を事実上制限した。このとき、日本企業は深刻な影響を受けた。
当時を振り返ると、中国による輸出規制によって、ネオジムやジスプロシウムといった主要レアアースの国内価格は約1年で10倍近くに高騰した。自動車産業では、コストが数千億円規模で上昇したとの推計もある。今回の規制も長引けば、同様の事態が再び起きかねない。
当時は、日本企業が調達先の見直しを迫られると同時に、日本政府もレアアース確保対策として総額約1000億円規模の予算を計上した。調達先の多角化や、廃棄された電気機器から磁石を回収するリサイクル事業などが進められた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
BYDの“軽”が日本に上陸 エコカー補助金の陰に潜む“監視リスク”
中国のEVメーカー、BYDが日本の軽自動車市場に参入すると発表した。中国製のEVを巡っては、欧米でセキュリティの懸念が指摘されている。多くの情報を収集するEVは、スパイ活動にも活用できると見られており、日本でも警戒が必要だ。
日本人の給与は依然として安すぎる? 頭脳流出で国の未来は、本当に大丈夫か
賃上げが経済政策として進められているが、世界の先進国と比べると日本の給料は安い。特にエンジニアなどの高度人材では差が大きく、海外企業から「安い労働力」を求められる事態だ。人材の流出を止めるため、“安すぎる”状態から脱する必要がある。
日本発の「夢の電池」はどこへ? 日本の技術がどんどん流出する理由
「夢の電池」と期待される技術が中国企業に流出した可能性があることが、国会で取り沙汰された。このようなケースは日本や米国で多数報告されている。怪しい投資などを厳しく規制しなければ、日本の技術開発力がそがれていく危険がある。
アサヒ、アスクルに続き、ジャガー・ランドローバーで何が起きた? 止まらないサイバー攻撃
大手企業へのランサムウェア攻撃が続いているが、英国ではジャガー・ランドローバーが被害を受け、英国経済に大きな打撃となった。犯行声明を出したグループの主犯格は10代の若者だという。被害企業の教訓を学び、対策を強化していく必要がある。
半導体とレアアースはどこへ向かうのか 2026年に高まる“見えないリスク”
世界的に注目される半導体やレアアースは、AIの急速な進展を背景に、2026年はますますその重要性が高まるだろう。米国や中国の貿易戦争によって、輸出規制などが実行されると、日本企業のビジネスに大きな影響を及ぼす可能性がある。
