牛角はなぜ「焼肉食堂」を増やすのか フードコートで焼肉が日常になる、2つの背景(1/4 ページ)
焼肉チェーン「牛角」がフードコートを中心に展開する「牛角焼肉食堂」が拡大している。物価高で二極化する焼肉業界の中で、焼肉を日常食へと引き寄せる戦略と、その合理性、今後の課題を読み解く。
本連載について:
都市ジャーナリストでチェーンストア研究家の谷頭和希氏が、現代のビジネスシーンを深く掘り下げる。都市再開発の成功例や課題、企業戦略の変化、消費者文化の進化に注目し、表面的な現象だけでなく、その背後にある背景を探る。日々変化する消費トレンドを通じて、社会や企業の動きに迫り、これからのビジネス環境や戦略について考えさせられる視点を提供していく。
焼肉チェーンとして知られる「牛角」が、じわじわと、ある業態を広げている。
「牛角焼肉食堂」だ。2025年12月時点で、国内80店舗に到達している。2025年は新規で30店舗を出店しており、2026年中には100店舗を超える勢いだ。出店の中心はフードコートである。
なぜ、牛角は牛角焼肉食堂を広げるのか? その動きから、焼肉業界の構造を考えてみたい。
気軽に焼肉を食べるための「牛角焼肉食堂」
牛角焼肉食堂は、ショッピングモールのフードコート向けに設計された「牛角」発の業態だ。カウンターで注文し、呼び出し後に受け取って共用席で食べる。
主役は秘伝ダレの鉄板焼肉定食や焼肉丼で、タン・ハラミ・ホルモンなど「焼肉らしい部位」もそろう。冷麺や豆冨チゲといったサイドメニューもあり、手軽に焼肉の満足感を得られる。価格帯は700〜1000円台で、丼は700円台、定食は800〜900円台が中心である(店舗により価格は異なる)。
牛角を展開するコロワイドの資料によると、牛角は「日常の気軽な焼肉」をテーマに、来店頻度を高める取り組みを進めているという。その流れの中で、「牛角焼肉食堂」の出店を加速させている。焼肉を「特別な外食」として扱うのではなく、普段の選択肢へ寄せていく。その受け皿として、フードコート向けの業態を増やしているわけだ。
おそらく、ここに「焼肉屋」ではなく「焼肉食堂」という命名の妙が効いてくる。牛角焼肉食堂は、フードコート専門店として「焼きたての焼肉を定食スタイルで」提供することを前面に出し、鉄板焼肉定食や焼肉丼を核に据えている。
食堂という言葉が呼び起こすのは、宴会やハレの日の外食ではなく、日常の食事だ。焼肉の魅力は残す一方、「特別な焼肉」という感覚は残さない。その名前に、一般の人が抱く「焼肉感」を変えていこうという意図が読み取れる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「廃虚アウトレット」の乱立、なぜ起こる? 絶好調なモールの裏で、二極化が進むワケ
業績を大きく伸ばすアウトレットがある一方で、ほとんど人も来ず、空きテナントだらけのアウトレットが増えている。その原因は何なのか?
丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由
またまた炎上した。丸亀製麺が讃岐うどんの本場・丸亀市と全く関係がないことである。このネタは何度も繰り返しているが、運営元のトリドールホールディングスはどのように考えているのだろうか。筆者の窪田氏は「讃岐うどんの看板を下ろしたほうがいい」という。なぜなら……。
「いきなり!ステーキ」はどこへ向かうのか 焼き台をなくした新店舗に、創業者ポスターがなかった理由
焼き台をなくした「いきなり!ステーキ」の新店舗を訪ねると、席は広く、肉はオーブン焼き、そして創業者のポスターがない。変わったこと、変えなかったこと、その境目で社長が何を考えているのか。
「イオンモール」10年後はどうなる? 空き店舗が増える中で、気になる「3つ」の新モール
かつて「街のにぎわいの中心地」ともいわれたイオンモールでも、近年は「安泰」ではない状況になっている。少子化が進む日本で大型ショッピングセンターが生き残る鍵は――。


