牛角はなぜ「焼肉食堂」を増やすのか フードコートで焼肉が日常になる、2つの背景(2/4 ページ)
焼肉チェーン「牛角」がフードコートを中心に展開する「牛角焼肉食堂」が拡大している。物価高で二極化する焼肉業界の中で、焼肉を日常食へと引き寄せる戦略と、その合理性、今後の課題を読み解く。
2つに分かれる焼肉チェーンのあり方
牛角が「気軽な焼肉」を目指す背景には、焼肉業界をめぐる状況がある。
焼肉は、物価高の局面で「割が合いにくくなる」外食の一つだ。東京商工リサーチによると、2025年は焼肉店倒産が59件で過去最高を更新した。前年の45件から30%以上も増加し、外食産業の中でも苦境にある。東京商工リサーチは、その原因として原材料高を指摘している。
肉の原価が上がるだけではない。人件費も上昇している。特にフルサービスの焼肉店の場合、人件費や設備費などがかかり、客席・換気・清掃といった「肉以外」のコストも大きい。つまり、店を維持するための固定費が全体として上がっている。
その結果として、特に焼肉チェーンは2つの方向に割れているのだ。
1つは、工夫を重ね、焼肉を「ある程度特別感のある食事」として守る方向だ。例えば、「焼肉きんぐ」(運営:物語コーポレーション)。食べ放題を基本として郊外に多く立地し、週末にはファミリー層が多く訪れる。物価高の時代、外食の怖さは「いくらになるか分からない」点にある。食べ放題は、その不安を最初に消せる。家族連れならなおさらだ。その意味でも食べ放題は強い。
物語コーポレーションの2025年6月期決算を見ると、「焼肉きんぐ」は同期に27店舗を出店し、351店舗となった。売上高は616億円で、前年比11%増、物語コーポレーション全体の売上高の約半分を占めている。 焼肉を「ハレの日の食事」として成立させ、規模を伸ばしているわけだ。
もう1つの方向が、焼肉を「日常に降ろす」方向だ。商品単価を下げて来店頻度を高め、結果として焼肉店で使われる金額の総量を増やす。これを実現するためにフルサービスをやめ、作業工程を標準化したり、客の回転速度を上げたりする。
代表的な店には「焼肉ライク」があるだろう。「ひとり焼肉」というスタイルを生み出し、極限まで運営コストを抑え、それをなるべく価格に反映させる。
要するに、物価高の時代、焼肉業界は2つに分かれている。1つは、イベントとしての焼肉を守ること。もう1つは、日常としての焼肉を訴求することだ。
そして、いま話題にしている「牛角焼肉定食」は、後者の選択肢を取っている。
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