“形だけ”の「自治体システム標準化」になりつつある今、オープンソース化は救世主となるか?(3/5 ページ)
自治体システムのオープンソース化は、現場にどのような影響を与えるのか。CIO補佐官がメリットと課題を解説する。
オープンソース化を進めるその前に――避けて通れない「土台の整理」
「自治体システムはオープンソースにふさわしいのか」という議論ではいつも「全国1700以上ある自治体が似たようなシステムをバラバラに開発している」という枕詞が出てきます。インパクトが大きい言葉なので多用されがちですが、実態は異なります。
まず、ほとんどの自治体は自らシステム開発をしていません。事業者に対して委託費を支払って、システムの導入開発、保守、運用を任せています。
一般的に、委託契約(請負契約)では契約内で特段の定めをしない限り、事業者が開発したプログラムの著作権は事業者に帰属します。したがって、質問にあった「公有財産」を有していません。
高知県庁の場合は、契約の中で「著作権のうち著作財産権に分類される権利は発注者(県)に移転させ、著作者人格権は行使しない」としています。
しかし、これだと事業者が一方的に不利なので、
- 事業者が当該プログラムを他の団体へ販売する際に、県が著作権者としてそれを支援すること
- 成約した場合には販売価格から一定の割合で著作権使用料を県に支払うこと
――を別途取り決めていました。これは県内のソフトウェア産業育成を目的としているためです。
つまり、自治体システムをオープンソース化するためには、まず契約において著作権の帰属を明確に定めておく必要があります。しかし、それだけでは十分とは言えません。高知県庁で採用していた仕組みも、あくまでフルスクラッチで開発した場合に限られ、既存のパッケージソフトウェアを導入するケースには適用できません。
それでも、パッケージのカスタマイズ部分や、周辺で動作するアドオンなどの開発部分について、著作権の取り扱いを整理しておくことは一定の意義があります。
また、「全国1700以上ある自治体が似たようなシステムをバラバラに開発している」という表現は、冒頭で触れた自治体システム標準化の議論でも頻繁に使われてきました。しかし、標準化の対象となった住民記録や税務などの基幹業務システムについては、実際には多くの自治体で共通するパッケージソフトウェアが導入されていたり、複数の自治体で共同運営が進んでいたりするなど、すでに一定の集約が進んでいました。
ところが、標準化の過程でこれらの仕組みが一旦解体され、その後、複雑で分かりづらい形で再び集約されるという経緯をたどった結果、システム全体の品質が以前よりも低下し、従来は存在しなかった中間事業者が介在することでコストが上昇するという問題も生じています。
とはいえ、こうした標準化の一連の動きの中で、パッケージソフトウェア自体を再構築する場面もあったことを考えると、著作権の取り扱いについて抜本的な議論を行う最後の機会だったのかもしれません。このような観点で十分な議論が行われなかったことは、非常に残念に感じています。
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