千葉のパチンコ店がDXで化けた IT人材ゼロから「半日作業を1秒」にした現場改革(2/3 ページ)
「DXに取り組みたいが、ITに詳しい人材がいない」――。多くの中小企業が抱えるこの悩みに、一つの答えを示しているのがヒカリシステムだ。同社は現場の工夫を積み重ねることで、DXを業務改革にとどめず、事業へと発展させてきた。
資料作成「半日→1秒」に
当初はDX担当として専任の担当者を1人配置していたが、推進の本格化に当たり、「DXサポートグループ」としてチーム化。各部門の相談窓口となりGoogle Workspaceの活用促進や課題の集約を進めていった。
実際に、DXにより現場業務を改善した事例も数多く生まれている。
例えば、パチンコ店では、台の配置や入れ替えを行う際、店内の配置図を基に詳細な資料を作成し、警察に申請しなければならない。どの台をどこに移動させ、新台をどの位置に設置するのかといった情報をリスト化する必要があるが、従来は一つ一つの台について配置図を見て確認しながら、書類に転記していた。ダブルチェックを含めると半日近くかかり、これを台が入れ替わる度に全店舗で実施するとなると、かなりの時間を要していた。
そこでアプリケーション開発プラットフォームの「Google Apps Script」(以下、GAS)を活用。配置図のデータを修正すると、自動的に申請用リストも更新される仕組みを構築した。これにより、半日かかっていた作業が1秒で完了するように。申請ミスの削減にもつながった。
他にも、店内では新台が導入された際には、その特徴やおすすめポイントを紹介する音声を流しているが、このような音声制作にはコストや時間がかかっていた。しかし、現在は「Google Gemini」で紹介文を作成し、音声ファイルとして出力することで容易に制作が可能になった。
これらの取り組みはいずれも、個別に見ると決して大掛かりな変革ではない。しかし、現場の業務に即した改善を積み重ねることで、確実に業務効率化につながっている。
評価制度と学習機会の提供――DX定着の工夫
DXを個人のスキルにとどめず、組織の力として定着させるために、同社は学びの共有と仕組みづくりに力を入れている。
毎週月曜日には、全社員がオンラインで参加するDX勉強会を開催。各部門が持ち回りで、自部門のDXによる改善事例やつまずいた事例を発表して、情報を共有している。
同社では社長が毎月1カ所ずつ事業所を回り、労働環境の点検をする「環境整備点検」を実施しているが、点検項目の中にDXによる改善事例の発表が盛り込まれている。発表内容について議論することで施策をブラッシュアップしている。
月に一度を目安にDX関連セミナーも開催。セミナーの内容は全て内製しており、Gemini、GASなど、毎回テーマを設けて実施している。
このように全社で活用事例やノウハウを共有することで、DXを特定の部署のみの取り組みではなく、自身の業務に直結するものだという意識を醸成している。
もっとも、これらの取り組みが最初からスムーズに進んだわけではない。業務フローの見直しや新たなツールの導入は、少なからず現場への負担を伴う。
日々の業務で追われる中で、従業員からはセミナーや勉強会への参加に対して、ネガティブな声もあったという。
この課題に対し、同社はDXを評価制度と結び付ける人事制度の見直しを実施した。
従業員を評価する際に用いるスキル表にDXに関する項目を新設し、ITスキルの習得状況を評価対象にした。また、役職者については、チームメンバーのセミナー参加状況を評価項目に追加。これらの評価は賞与に反映される。
こうした取り組みを通じて、同社のDXは“自社の業務改善”にとどまらず、他社にも再現可能なノウハウとして蓄積していった。
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