「まいばすけっと」が都心に増え続けるワケ イオンが仕掛けた“ちょっと変なスーパー”の正体:小売・流通アナリストの視点(1/5 ページ)
まいばすけっとが京浜間で急増している。そほ背後には、イオンの巧みな“小規模スーパー展開”の戦略があった……。
筆者プロフィール:中井彰人(なかい あきひと)
みずほ銀行産業調査部・流通アナリスト12年間の後、独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。執筆、講演活動:ITmediaビジネスオンラインほか、月刊連載6本以上、TV等マスコミ出演多数。
主な著書:「小売ビジネス」(2025年 クロスメディア・パブリッシング社)、「図解即戦力 小売業界」(2021年 技術評論社)。東洋経済オンラインアワード2023(ニューウエイヴ賞)受賞。
都内で一番見かけるスーパーといえば、イオンの小型スーパー「まいばすけっと」(以下、まいばす)であろう。駅どころかバス停ごとに店舗があるイメージで、いつの間にか近所にできている印象だ。コンビニサイズの店舗であるため、コンビニが撤退した後にまいばすになるというパターンが多く、急速に規模を拡大している。
筆者の横浜の自宅の近所にもたくさんあり、なぜかセブン‐イレブン(以下、セブン)の近所にばかり出店しているように見える。コンビニ事業で完敗したイオンによる、セブンへの意趣返しかと邪推したこともあるが、実はそうではないらしい。コンビニ業界で圧倒的王者だったセブンに、ライバル店が負けて撤退。その跡地に、まいばすが居抜きで出店しているため、セブンと対峙する構図となっているようだ。
ただ、まいばすは少し郊外に行くと急に見かけなくなる。東京23区から横浜あたりまでの京浜間には、まいばすのドミナント(集中展開商勢圏)がすでに形成されているが、その外側にはほとんど出ていない。
図表1は現状の店舗網だが、同じ首都圏の埼玉や千葉では、東京23区との間のエリアに少しあるだけで、都下や横浜以遠になると急に少なくなる。東京通勤圏の鉄道路線沿いに、ほぼ限定して出店していることが分かるだろう。
まいばすはこの狭いエリアに1200店舗以上を集中配備し、約3000億円規模のビジネスを動かしている。ここまで偏った出店を行い、密集しているスーパーは、まいばすが初めてといえるだろう。スーパーとして、変わり種であることは間違いない。
そもそもの話だが、コンビニの跡地に当たり前のように出店できるスーパーは、まいばすくらいしかいない。ただ、なぜコンビニサイズなのか、なぜ23区に集中しているのか。さらには、店舗が小さくて品ぞろえは良くないにもかかわらず、なぜ成長できるのかなど、まいばすには謎が多い。
真面目な話をすると、一見コンビニのようなこのスーパーは、既存のスーパーとは一線を画したイオンの戦略的実験業態なのである。そして、このまいばすの成功は、実はスーパー業界の歴史の転換点になる可能性すら秘めている。
今回は、この“ちょっと変なスーパー”であるまいばすのビジネスモデルの裏側を探りたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ドラッグストアの大規模再編で、クリエイトSDが描く“勝ち筋”は?
ドラッグストアの大規模再編に終わりが見え始めている。その中で、神奈川トップクラスのクリエイトSDは、今後どのような成長を描いているのか?
トライアルGO、都内初出店 コンビニではない“真の競争相手”とは
トライアルGOが都内に初出店した。イオンのまいばすと似た形態で、「コンビニのライバル」とも報じられた。ただ、こうした小型スーパーの出店で困るのは、実はコンビニではなく、全く別の企業なのである……。
ヨーカ堂の“負け癖”断ち切れるか 復活支える「潤沢な投資余力」も
セブン&アイと分かれ、米投資ファンドのベイン傘下で再出発を切ったヨークHD。2028年の上場までに、歩むべき道のりとは?
イオンの攻勢、セブンの苦境――「スーパー大再編時代」と寡占化の行方
各地でM&Aを行い、小売業のトップの座を確立しつつあるイオン。一気に攻勢をかける理由は何なのか。そして次なるライバルはどの企業なのか。
収益悪化が止まらない自販機業界 結局「人手」が必要なビジネスの現実
「自動販売機=省人化」のイメージに反し、実際は人手に頼る構造を持つ自販機ビジネス。人件費の高騰や売上の減少が収益を直撃し、業界は今、大きな転換点に立たされている。


