AIを組織に根付かせるには? インサイダー情報検知AIを、現場の抵抗なく進められたワケ(2/5 ページ)
生成AIの導入は、多くの企業で頓挫している。しかし、大和アセットマネジメントは、LegalOn Technologiesと共同でAIシステムの開発を行い、順調に導入を進めている。その秘訣は何なのか?
「自分でやったほうが速い」の壁
生成AIの導入は、多くの企業で頓挫している。
ある金融機関でAI導入を担当する幹部はこう語る。「簡単にPOC(概念実証)を始められ、それっぽいものはできる。しかし、そこからが地獄の始まり。米国では5〜12%しか業務リリースに至らないというデータもある」
中川氏も、この壁を認識していた。「AIは変な答えを出すことがあり、『自分でやったほうが速い』という声はあると思う」
現場がAIを使わなくなるのは、精度が中途半端だと、結局は人間が全件チェックし直す羽目になるからだ。医療画像診断の世界では、AIが誤認識により警告を出しすぎたために医師がスイッチを切ってしまうケースが相次ぎ、開発の課題となった。金融でも、事情は同じである。
そんな危うさを抱えるAI活用だが、大和アセットマネジメントにとって転機となったのは、インサイダー検知に先立って導入した広告審査AIでの経験だった。
広告審査とは、投資信託の販売資料や運用レポートが法令やガイドラインに違反していないかをチェックする業務だ。「元本保証」のように明らかに使用が規制された表現はもちろん、将来の運用成果を保証するような表現や断定的な表現、扇動するような表現など、文脈によって判断が分かれるグレーゾーンのものも多い。同社では月に1000件を超える審査を行っており、担当者の負荷は大きかった。
難しさは文脈判断だけではない。LegalOn Technologiesの舟木類佳氏は「画像やグラフ、表も出てくる。ChatGPTにデータを与えればすぐに判断できるという話ではない」と語る。
大和アセットマネジメント法務コンプライアンス部の五島麻以氏は、「日々フィードバックを行い、その度に精度を上げてくださった結果、AIが文脈や資料全体を見た上でコメントを出してくれるようになりました」と振り返る。この点が実用化の鍵となり、広告審査での成功体験が、次の挑戦への土台となったのである。
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