コラム
「損したくない」で無料に向かう「お散歩界隈」 マーケティングの販促の前提が揺らぐ:廣瀬涼「エンタメビジネス研究所」(3/4 ページ)
「おさんぽ界隈」という言葉をご存じだろうか。彼らの存在によって、企業におけるマーケティングの「販促」の前提が揺らぐ可能性がある。そのワケを解説する。
バズや承認欲求を生みやすい「おさんぽ界隈」の情報
ここまで、おさんぽ界隈が盛り上がっている理由と、それによる企業のマーケティングへの影響を考えてきた。続いて、おさんぽ界隈が情報を不特定多数に向けて発信し続ける理由ついて考えてみたい。
通常、イベント参加後に感想やサンプルの使用感をSNSに投稿するように求められることは珍しくないが、イベント開催前の情報を受け手が積極的に拡散するのは不利だといえる。情報が広がれば広がるほど、サンプルやイベント体験の「枠」をより多くの人と競い合うことになるからだ。
合理的に考えれば、こうした情報は内緒にして行く方が得策であるはずだ。にもかかわらず、界隈の人々が情報を共有し合うのは、界隈が相互作用によって成立するコミュニティであることに加え、こうした投稿がバズりやすく、承認欲求を満たしやすい構造があるからだ。
近年のバズマーケティングでは、商品そのものよりも、それを手に入れたり体験したりした「人」が注目されやすい。無料イベントやサンプルは、「得をした人」を分かりやすく演出できるため、投稿の拡散力が高い。関心はモノだけでなく、「それを獲得できた人」へも向かい、共感や羨望が次の拡散を生む。こうした循環の中で、「おさんぽ界隈」自体をテーマに情報を発信するアカウントやインフルエンサーが成立してしまうのである。
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