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20代の4人に1人が「カスハラを知らない」現実 国や企業が見落としている対策の第一歩とは河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)

さまざまな背景から社会的な問題として浸透したカスハラ。今年10月にはいわゆる「カスハラ防止法」が施行される見込みです。そんな中、労働政策審議会の分科会が示したカスハラの定義が複雑であることをご存知でしょうか。

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著者:河合薫

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。


 カスハラ……その場面が想像できるだけに、嫌な言葉です。

 2021年11月、カスハラと長時間労働が、当時26歳の会社員だった息子を死に至らしめたとして、遺族が国に対し、労働災害(労災)と認めなかった国による決定の取り消しを求める裁判を起こしました。

 男性会社員は2015年9月から2年間、通信販売に関する問い合わせやクレームの電話受け付けを担当し、顧客から「回りくどい説明しやがって、ボケ」「お前なんか向いてないわ、その仕事」「死ね」といった暴言を受けていました。長時間労働も重なり、2017年10月にうつ病と診断されて休職。その翌年、自宅で自ら命を絶ちました。

 亡くなった男性の遺族が2021年3月に労災を申請したところ、労働基準監督署は「男性の心理的負荷は強くなかった」として認めず、遺族補償金を不支給にすると決定。これを遺族側は不服として、提訴に踏み切ったのです。

 この事件を大手メディアが大々的に取り上げたことに加え、コロナ禍で起きたトイレットペーパー騒動での「コロナよりも怖いのは人間だった」というドラッグストア店員の悲痛な叫びもあり、カスハラは社会的な問題として浸透しました。厚生労働省も2023年9月、精神障害の労災認定基準にカスハラを加えるなど、事態を重視。今年10月にはいわゆる「カスハラ防止法」が施行される見込みです。

複雑なカスハラの定義、どう理解すればいいのか

 そんな中、労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の分科会が、カスハラの具体例を示した対策指針案を公表しました。

 指針案ではカスハラについて、

(1)顧客等の言動であって、

(2)その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、

(3)労働者の就業環境が害されるものであり、

(1)〜(3)の要素を全て満たすもの

 と定義。その上で、「なお、顧客等からの苦情の全てが職場におけるカスタマーハラスメントに該当するわけではなく、客観的にみて、社会通念上許容される範囲で行われたものは、いわば正当な申入れであり、職場におけるカスタマーハラスメントには当たらない」としています。

kk
複雑なカスハラの定義(提供:ゲッティイメージズ)

 なるほど……かなり複雑な定義です。

 しかも、指針に示された「カスハラの具体例=社会通念上許容される範囲を超えた言動の典型的な例」を見ると、ますます混沌としてきます(以下、一部を抜粋)。

  • 性的な要求や、労働者のプライバシーに関わる要求をすること。
  • 殴る、蹴る、叩くなどの暴行を行うこと
  • 物を投げつけること
  • つばを吐きかけること
  • 土下座を強要すること
  • 盗撮や無断での撮影をすること
  • 大きな声をあげて労働者や周囲を威圧すること
  • 長時間に渡る居座りや電話で労働者を拘束すること
  • 同様の質問を執拗に繰り返すこと

 など、どれもこれも「社会通念上、そりゃあ、許されないよね。たとえ客でも」と思うのですが、指針では「個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得る」としているのです。

 はて。これはどう理解すればいいのでしょうか。

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