負債2億円から売上35億円へ 「自分の代で潰す」と決めた二代目の“悪あがき”が最強のチームをつくり出すまで(5/6 ページ)
2億円の負債を抱えるかもしれなかった状況で家業を継ぎ、”悪あがき”を重ねて売り上げ35億円を達成した清松総合鐵工。どのような改革を経て、V字回復を実現したのか。
前向きな勘違いが生んだ、売り上げ35億円とハワイ旅行
朝礼改革による「承認」の文化は、現場の雰囲気を徐々に変えていった。それまでは「自分の仕事が終われば、業務は終わり」という考えだった職人たちが、互いの状況を気にかけ、遅れている工程を自発的に手伝うようになったのである。この相互扶助が、組織全体の生産性を底上げしていった。
特筆すべきは、2017年当時に約12億円だった売り上げを、わずか3年で37億円へと押し上げたエピソードだ。
きっかけは、清松氏が出演したラジオ番組で目標を問われ、当時流行していた「35億」というフレーズを口にしたことだった。これを聞いた社員から「達成したら何かいいことあるんですか?」と問われ、清松氏は「ハワイに連れて行く」と約束。
すると、社員たちは自らポスターを作って社内外に貼り出し、目標達成に向けて動き出したのだ。清松氏もこの流れに乗っかり、「35億円を売り上げて、ハワイに行こう!」と朝礼で話し始めた。
「みんなが無理と思っているときは、どんな施策をしても、売り上げは伸びない」。そう考えた清松氏は、一見不可能に思える目標を達成させるために、こんな具体例を朝礼で説いた。
「売り上げを2倍にするのは難しくても、単価、従業員数、機械性能など8つの項目をそれぞれ『1.1倍』にすることなら、できそうな気がしないか? 1.1の8乗は2.14になる。つまり、各項目を1割ずつ改善するだけで、売り上げは2倍以上にできるんだ」
1.1の8乗の説明を聞いた社員たちは「それならできるかもしれない」という、良い意味での「勘違い」をし始めた。職人としてそれぞれの仕事に自負を持つ社員たちだからこそ、社長の言葉をヒントに「どの項目なら1.1倍にできるか」を自ら考え、実践に移していったという。
こうした心理的な限界が取り払われることで、現場からは「どうすればできるか?」という前向きな問いが生まれるようになったと清松氏は分析する。
2020年、同社は見事に目標を達成し、全社員でのハワイ旅行を実現させた。かつて「自らの責任で潰すため」に会社を継いだ清松氏は、悪あがきの末に、社員が自ら考え、助け合う「強いチーム」を作り上げたのである。
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