負債2億円から売上35億円へ 「自分の代で潰す」と決めた二代目の“悪あがき”が最強のチームをつくり出すまで(6/6 ページ)
2億円の負債を抱えるかもしれなかった状況で家業を継ぎ、”悪あがき”を重ねて売り上げ35億円を達成した清松総合鐵工。どのような改革を経て、V字回復を実現したのか。
福利厚生は「経費」ではなく、未来への「投資」
清松氏の「悪あがき」は、今もなお続いている。現在、同社が掲げているのは「100万いいねを貯めて、みんなで宇宙旅行へ行く」という壮大な目標だ。朝礼での「いいね運動」でたくさんの「いいね」といえる取り組みを共有し、発表された「いいね」を貯めて宇宙旅行を目指す。年間で貯まる「いいね」は約1000件。あえて荒唐無稽とも思える超長期目標を掲げるのには、清松氏なりの狙いがある。
「達成できなかったらモチベーションが下がるような現実的な目標ではなく、冗談だと笑い飛ばせるほどの目標だからこそ、社員が純粋に達成までの過程を楽しめる。大切なのは、社員が楽しめる企画を常に提供し続けることだと思っています」
こうした考えは、同社の福利厚生にも一貫している。一般的に福利厚生は「削るべき経費」と捉えられがちだが、清松氏はこれを「営業費と同じ投資」と定義する。忘年会の景品に200万円、社員旅行に500万円といった予算を投じるのも、全ては社員のモチベーションへの投資だ。
さらにユニークなのが、NISA(少額投資非課税制度)の活用に対する特別奨励金だ。毎月1万5000円を給与明細に独立した項目として支給している。「単に給料を上げるだけでは、翌月にはそれが当たり前になってしまいます。明細に項目があることで、会社が自分たちのために何をしてくれているのかが心に残る。モチベーションを上げるのは賃金額そのものではなく、心に残る行動の積み重ねなのです」
こうした「社員が主役」の経営は、外部からも評価を受けている。同社は「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」に2023年から3年連続で認定されているほか、大同生命が実施する「DAIDO KENCO AWARD」においても3年連続で表彰を受けるなど、この分野でも注目される存在となりつつある。
また、夏祭りや健康改善に向けたウォーキング大会など、年に2〜3回はイベントを開催。「次は何が起こるんだろう」と社員がワクワクする環境を作り続けるため、清松氏は今後も、新しいイベントを企画・開催していくと楽しそうに話す。
清松総合鐵工は、多額の負債と組織の分断という絶望的な状況から、「承認」を軸とした朝礼改革によって、社員が自ら考え助け合う強いチームへと変貌を遂げた。
かつて「自らの代で潰す」ことを覚悟した二代目の“悪あがき”は、売り上げ3倍超という成果を経て、全社員で宇宙を目指す壮大な冒険へと進化している。心理的な限界を打ち破った企業は、次にどのような景色を私たちに見せてくれるのだろうか。
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