プライシングは「事業戦略そのもの」 SCSKが「コスト積み上げ式」で価格を決めないワケ(1/3 ページ)
価格とは、単に「いくらで売るか」を決める数字ではありません。サービスの価値をどれだけ正しく伝えられるか、そしてその価値を顧客とどう共有できるかを決定付ける、企業活動の中核だと言えます。
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学研が挑む"真のDX"──「本当に使われるデジタル」で目指す教育価値のバリューアップ
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【概要】学研グループは、DXを目的化するのではなく、現場と顧客にとって“本当に使われるデジタル”を出発点に教育価値のアップデートに挑戦しています。本講演では、現場で浮き彫りになった課題や、実際に行ってきた改善や仕組みづくり、そこで得られた知見がどのように学研のDX推進を形づくんできたのかをお伝えします。既存のデジタル活用の成果と学びを振り返りながら、学研が目指す“真のDX”の姿をご紹介します。
著者プロフィール
高橋嘉尋(たかはしよしひろ)
プライシングスタジオ代表取締役社長。
これまでリクルートをはじめとする大手企業から、「money forward」など中小企業まで数十サービスの価格決定を支援。
また、公的機関、学会、雑誌などへのプライシングに関する論文提出や講演会、寄稿などを通じ、プライシングに対するノウハウを積極的に発信。
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価格とは、単に「いくらで売るか」を決める数字ではありません。サービスの価値をどれだけ正しく伝えられるか、そしてその価値を顧客とどう共有できるかを決定付ける、企業活動の中核だと言えます。
近年、製造業やSaaS業界を中心に、価値ベースのプライシング、通称「バリューベースプライシング」という考え方が注目を集めています。「顧客が感じる価値」を起点に価格を設計する手法です。
これまでは月額・ユーザー数ベースや、コスト積み上げ式の価格設定が主流でした。このバリューベースプライシングを本当に実践できている企業は、まだ多くありません。
そうした中で先進的な取り組みを行っているのが、SCSKでIoTソリューション「CollaboView」事業を進めている白川正人さん(クラウドサービス本部長)です。
白川さんは、現在のように「値上げ」や「値決め」が社会的に関心を集める以前から、原価起点ではなく、企業のガバナンス・セキュリティ基準・業務特性といった「価値」を起点とした価格設計を取り入れてきました。CollaboViewの値付けでも、筆者が代表を務めるプライシングスタジオとともに、社内メンバーを巻き込みながらバリューベースの考え方を実践しています。
今回は、同社が「価値に値段を付ける」戦略を進める狙いについて、白川さんに話を聞きました。聞き手はプライシングスタジオ 代表取締役CEO高橋嘉尋。
SCSKが価格を「価値ベース」で決めるワケ
高橋: まず、IoTソリューション「CollaboView」について教えてください。
白川: 工場やオフィスの人・モノの存在と人の知覚情報をIoTセンサーで収集し「見える化」するサービスです。センサーや自律的にネットワークを形成する技術、AIを組み合わせ、熟練工を中心とした就労人口減という社会課題を解決したいと考えています。
特に今、力を入れているのは工場の生産現場の予知保全です。生産設備の故障は製造業にとって生産計画に直結する大きな課題ですが、音や振動からその予兆を察知できる人材は限られており、その代替を果たすのがわれわれのソリューションとなります。
高橋: 保全作業はお金を生まない一方で、小さな故障が大きな問題になりますからね。そこをテクノロジーで効率化するというのは、すごく意義のある取り組みだと思います。
白川: お客さまからしても、保全に人件費を割くのは難しいのが現状です。「見回り」や「点検」といった人手がかかる業務の代替、つまり“省力化”のニーズが、現場では非常に強いと感じています。
高橋: 白川さんはCollaboViewに限らず、以前から「価値に基づいて価格を決めること」を実践してきたと伺いました。そもそも白川さんが、こうした考え方に至った原体験はどんな場面だったのでしょうか。
白川: 最初のきっかけは、SCSKでクラウドサービスを立ち上げた頃ですね。ある案件で、とにかく時間が足りないという状況だったのです。
当時、私たちの技術を使えば、テスト環境を瞬時にコピーでき、通常より何倍も速くプロジェクトが進んだのです。お客さまにもすごく喜ばれました。
高橋: ただの効率化じゃなくて、“時間”という価値を提供したんですね。
白川: そうなんです。でもそのとき、従来のコスト積み上げ式の価格だと、かえって価格が安くなっちゃうんですよ。「手間が減ってるんだから安くしてくれませんか?」って(笑)。
でも実際には、同じものでも状況次第で価値は大きく変わる。それなら、価格もそれに合わせて変えるべきだろう、と自然に考えるようになりました。
高橋: 「効率化すると安くなる」って、本当は逆ですよね。お客さまにとっての価値はむしろ上がってるはずなのに。
白川: おっしゃる通りです。だから私にとっては、価格は“価値を翻訳する言語”みたいなものなんです。その翻訳がうまくできれば、お客さまにも伝わるし、社内でも納得感をもって動ける。
この時の成功体験がベースになって、今回のCollaboViewでも、最初から「価値ベースでいこう」という方針は自然と決まっていました。
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