「セゾンカードの成功」こそ敵だった? クレディセゾン社長が捨てた“波風の立たない意思決定”(2/3 ページ)
ダイバーシティに取り組む企業は増えている。だが、それを経営戦略として説明できる企業はどれほどあるだろうか。入山章栄教授とクレディセゾン経営陣の鼎談から、多様性が企業にもたらす効果を考える。
クレディセゾンが会議で“衝突”を歓迎するワケ
また、企業にダイバーシティが必要なもう一つの理由が、不祥事を防ぐためのガバナンス強化としての効果だ。
同質化した組織はしばしば常識にとらわれてしまう。しかしその常識は、時代に応じて変化するもの。その常識が、今の社会全体の常識と一致しているとは限らない。組織内部で共有された“ローカルな正しさ”が、外部から見れば“非常識”になっている可能性もある。
同質性が高まるほど、組織は内に閉じていく。異なる意見や外部の視点が存在してこそ、初めて「それは本当に大丈夫か?」という問いが生まれる。ダイバーシティ施策は、イノベーション装置であると同時に、リスクマネジメント装置にもなるのだ。
もっとも、ダイバーシティが常に最適解とは限らない。企業のフェーズによっては、むしろ「同質性」が武器になる場合もある。
例えば創業期やスタートアップ段階では、気の合う仲間が同じ方向を向いて走ることが何より重要だ。多様性による意見の衝突は、スピードを削ぐ要因にもなり得る。
同様に、圧倒的に強いプロダクトを持ち、トップダウンで市場を席巻しているフェーズにおいても、同質的な組織の方が実行スピードの面で優位に立つ場合がある。
クレディセゾンにおいても1980年代に「セゾンカード」という市場優位性を持つプロダクトが誕生したばかりの時期は、モノリシック(単一的)な組織体制が推進力を生んでいた。しかしその後、同社は単一のプロダクトに頼るのではなく、多角的な事業を展開する形へと発展。イノベーションの創出が求められ、多様性のある組織体制が力を発揮しているという。
現在、同社のボードメンバーのうち、プロパーでクレディセゾンに入社しているのは水野社長一人。他の役員は異なる業界やバックグラウンドを持つ「外の知」を持つ人材だ。
「セゾンカードという強いプロダクトの勢いに乗り、業績が良くなればなるほど組織はどんどん同質化していきました。そしてある時、業績も伸び悩むようになりました。現在のように多様なボードメンバーによる経営体制へと移行して以降、業績は回復傾向にあります」と水野社長。
ボードメンバーが集まる会議では、意見の衝突は日常茶飯事だという。しかし、この衝突が、同質化を防ぎ、イノベーションの創出に貢献している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
生成AIで「計300万時間」の削減へ クレディセゾンが挑む全社員AIワーカー化の現実解
クレディセゾンは9月1日、全社員3700人を対象にした「CSAX戦略」を始動させた。2027年度末までに累計300万時間、社員1500人の年間労働時間に相当する業務削減を目指す野心的な取り組みである。
シニア4000人、外国人3500人 すかいらーくにはなぜ多様な人材が集まるのか
すかいらーくでは、シニア4000人、外国人3500人と、多様な人材が働いている。
なぜエース社員が、たった数百円のために交通費をごまかすのか できる社員ほど陥る心理的なワナ
空気が緩んだとき、最初に崩れるのは、意外にも優秀な成績を出している人だ。「モラルライセンシング」という認知の歪みについて解説する。
