食事補助の非課税枠「3500円→7500円」へ 42年ぶり改正を“実質賃上げ”に変えられるか:「総務」から会社を変える(2/3 ページ)
令和8年度税制改正大綱において、企業が従業員に提供する昼食代など食事補助の非課税限度額が、現行の月額3500円から7500円へと拡充される。1984年以来、実に42年間にわたって据え置かれてきた非課税限度額の拡充というニュースは、総務パーソンにとって単なる実務上の変更だけではない意味がある。
企業としては負担増 どう向き合うべきか
こうした変化に対応する際、総務の前に立ちはだかるのは「コスト」の壁だ。食事補助を7500円まで引き上げることは、単純に企業負担の増加を意味する。経営層に対し、単に「他社もやっているから」「社員が要望しているから」という理由だけで提案しても、首を縦に振らせることは難しい。
ここで必要になるのが、福利厚生を「コスト」ではなく「投資」として語るロジックである。総務は、以下の3つの視点を持って経営層と交渉すべきだ。
実質手取り額の最大化
額面の給与を上げるよりも、非課税枠を活用した福利厚生の方が、社員の実質的な手取り額を効率的に増やせる。
採用、定着率へのインパクト
「42年ぶりの改正に即座に対応した」というスピード感そのものが、従業員を大切にする企業姿勢として、採用市場での強力なメッセージになる。
健康投資による生産性向上
食事補助を単なる金銭支援ではなく、「適切な栄養摂取による健康維持」と位置付けることで、人的資本経営の文脈に乗せることができる。
現場の声を集約し、それを経営層に響く言葉に翻訳する。これこそが次世代の総務に求められる高度な調整能力だ。社員の不満を聞くだけの「御用聞き」を卒業し、経営戦略としての福利厚生をデザインするプロデューサーへと進化していこう。
福利厚生は「選ばれる企業」になるための重要なポイント
福利厚生は今や「エンゲージメント(貢献意欲)の向上」に役立つ施策へとシフトしている。若手社員を中心として企業に求められているのは、単なる「働きやすさ=制度の充実」だけでなく、「ここで働きたい」「この会社は自分の人生を応援してくれている」という「働きがい」へのリンクだからだ。
例えば、食事補助の拡充をきっかけに「社員同士のランチコミュニケーションの活性化」を目的とした独自の加算制度を設けるのも良いだろう。健康診断の結果と連動してヘルシーな食事への補助を手厚くするなど、会社のカルチャーを反映させた独自色も打ち出すべきだ。
福利厚生は、企業から社員への「無言のメッセージ」である。どの項目を充実させるかは、その企業が社員のどのような行動を称賛し、どのような状態を望んでいるかを雄弁に語る。次世代の総務は、福利厚生を通じて自社のアイデンティティを表現していく必要がある。
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