独居房はどう生まれ変わったのか 「星のや奈良監獄」ホテルの舞台裏を聞いた:インタビュー劇場(不定期公演)(3/5 ページ)
1908年に建てられた重要文化財「旧奈良監獄」が、ホテルに生まれ変わる。独居房をつなげた客室や改修の工夫など、その舞台裏を総支配人に聞いた。
残すところは残し、改修するところは改修
掛川: 重要文化財なので、国としてはできるだけそのまま残したい。星野リゾートとしては、快適な空間を提供したいので、変更したいところは変更したい。それぞれに考えがあって、意見をすり合わせるのに時間がかかりました。
例えば、客室。先ほど「独居房10房分をつなぎ合わせて〜〜」といった話をしましたが、部屋と部屋をつなぐ開口部の広さをどうするか、といった議論もありました。大人1人が通れる広さにすればいいのか、それとも1.5人分の広さにしたほうがいいのか。また、重厚なレンガの壁が並んでいるわけですが、そのまま残すのか、それとも柔らかさを演出するために木材を取り入れたほうがいいのか。
独居房は1室につき窓が1個あるので、10室をつなげれば窓が10個になる。それぞれの窓には鉄格子が付いているので、そのままではリラックスできる空間にならないのではないか、と感じました。
土肥: で、どうしたのですか?
掛川: メリハリをつけ、残すところは残し、改修するところは改修する形で落ち着きました。例えば、部屋と部屋をつなぐ壁は取り除いて、そこに木枠をはめました。窓の鉄格子は残して、内側に木製のフレームをはめました。
このほかに、階段の問題がありました。快適性を求めるのであれば、階段や段差はできるだけないほうがいい。しかし、重要文化財として残すべき階段もある。取り払えば全体のバランスが崩れてしまうので、運営側として譲れないものと、そうでないものを整理しながら、事業を前に進めていきました。
例えば、施設の中央には看守所があって、そこに階段がある。利便性だけを考えれば、階段はないほうがいいかもしれません。ですが、この階段があることで、空間に独特の趣が生まれているんですよね。
当時、看守がそこに立ち、1階と2階の両方を見渡せるように設計されていました。受刑者を監視するための構造ですが、いまでは旧奈良監獄を象徴する場所になっていると思うんですよね。
この建物に来て、この場所に立ってこそ、感じられるものがあるのではないか。安全に配慮しなければいけないところは、手を加えましたが、そうではないところはできるだけ残す形としました。
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