「買えない」が最強の広告? ボンボンドロップシールとたまごっちに共通する、熱狂を生むUX:グッドパッチとUXの話をしようか(2/3 ページ)
一見、ただの「かわいいシール」なのに、なぜボンボンドロップシールはここまでの熱狂を生んだのか。平成のヒット商品「たまごっち」と比較しながら考えてみよう。
「貼る楽しさ」を超えた、ボンボンドロップシール
ボンボンドロップシールの出発点は、きわめてシンプルだったと開発に携わったデザイナーが語っています。
透明感のある立体的な質感。貼るだけで気分が少し上がる、デコレーション用のシール。ここまでの流行になるとは想定しているはずもなく、あくまで「貼る楽しさ」や「見た目のかわいさ」を重視して開発されていたそうです。
ところが発売後、想定を超える反響が生まれました。一部店舗ではすぐに品薄となり、「欲しいのに買えない」状況が発生します。売り切れ棚の写真がSNSに投稿され、「どこにも売っていない」という声が拡散され、フリマアプリでの高額取引が可視化され、再販情報が待ち望まれるようになっていきました。
こうして、シールは単なる文房具ではなく、「手に入れたかどうか」が語られる存在へと変化していきました。重要なのは、ブームの中心がプロダクトの機能や見た目から、入手体験そのものへと移っていった点です。
先日、小学生の娘がいる筆者の姉にボンボンドロップシールの流行について聞いてみたところ、興味深い話をしてくれました。姪はシール交換には特に興味がなく、シール帳も持っていないとのことでした。しかし、流行前に友達からもらったボンボンドロップシールを今も大切に取っているそうです。その話を嬉しそうに語る姉の姿を見て、「持っていること自体に意味が宿る」という状況を理解しました。
さらに興味深いのは、ボンボンドロップシールが「持っている」という価値から進化し、自己表現のツールになっているという点です。
「どの柄を持っているか?」「どう並べているか?」「どんな交換をしたか?」――こうした違いが、その人のセンスや立場を示すシグナルになり、このプロダクトは、消費財からアイデンティティを語る道具へと変わっていきます。
SNSや生成AIの普及により、誰もが発信者になれる時代になりました。ユーザーが自らコンテンツを生み出せる環境では、商品は単なる「使うもの」ではなく、「自分自身を語る材料」へと変われるかどうかも重要です。自己表現の媒介となった瞬間、プロダクトは機能価値を超え、社会的な意味を帯び始めるのです。
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