「買えない」が最強の広告? ボンボンドロップシールとたまごっちに共通する、熱狂を生むUX:グッドパッチとUXの話をしようか(3/3 ページ)
一見、ただの「かわいいシール」なのに、なぜボンボンドロップシールはここまでの熱狂を生んだのか。平成のヒット商品「たまごっち」と比較しながら考えてみよう。
自社の製品はユーザーが再発明したくなるか?
この変化は、多様性の浸透やSNSの成熟といった令和ならではの環境と結び付き、たまごっちを超える「ユーザーによる価値の再発明」が起きたと言えるでしょう。
ボンボンドロップシールの事例は、現代のヒット商品がどのように生まれるのかを象徴しています。それは作る側の完璧な設計の成果というよりも、ユーザーが体験を拡張し、意味を上書きした結果です。令和のヒットは、パッケージの中で完結しません。社会の中で語られ、共有され、意味付けられながら育っていくのです。
では、どうすればユーザーはプロダクトを“再発明”してくれるのでしょうか。たまごっちとボンボンドロップシールの事例から浮かび上がった、いくつかの共通点を振り返ってみます。
1つ目は、語りたくなる余白があることです。作り込まれ複雑になった体験は、使い方が固定され、拡張されにくくなります。一方で、どんな並べ方をするか、どう交換するか、どこで手に入れたかなど、解釈の余地が残されているプロダクトは、ユーザーの想像力を引き出し、投稿やうわさ話から新しい文脈を呼び込みます。
2つ目は、他者との関係性の中で価値が立ち上がる構造を持っていることです。1人で完結するよりも、見せ合う、比べる、交換する、教え合うなどの行動が自然に発生すると、プロダクトは「個人の所有物」から「自己表現の道具」へと変わっていきます。
この変化は、広告よりも強力です。なぜなら意味を与えているのが、企業ではなくユーザー自身なので、他のユーザーが共感を持ちやすいからです。これらは玩具や文房具の話に限りません。SaaSでも、金融サービスでも、サブスクリプションでも同じ構造が起きています。
3つ目は、参加のハードルが低いことです。初代たまごっちは2000円前後、ボンボンドロップシールは550円と、多くの人が手に取りやすい価格帯です。高額で複雑な商品よりも、気軽に試せて、話題に乗りやすいもののほうが、文化になりやすい構造があるのかもしれません。小さな購入体験が集合的な現象へと膨らんだとき、複数人による社会性が「再発明」を生むのでしょう。
そして何より重要なのは、この「ユーザーによる再発明」を企業が完全に設計しようとしないことかもしれません。あくまで再発明できる余白を用意し、どのような共創が生まれるかはユーザーに委ねる。その姿勢こそが、次の熱狂を生む条件なのです。
SNSや生成AIにより、ユーザーがコンテンツを生み出しやすくなったこの時代ならではの拡がり方が、次にどんな再発明を生むか――その兆しは、すでに私たちの身の回りに芽吹いているかもしれません。
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