なぜ高級店で、サーモンは出てこないのか:寿司ビジネス(2/2 ページ)
回転寿司で定番のサーモンは、高級寿司店ではほとんど扱われない。これは江戸前寿司の価値観や天然魚重視の文化によるものである。しかし、現代の寿司ビジネスにおいては、安定した品質と扱いやすさから欠かせないネタである。
ただし、これはサーモンの価値が低いという意味ではありません。むしろ逆です。サーモンは、生産から流通、品質管理までが高度に設計された、現代的な寿司ネタの代表格です。脂の安定感、安定した味、クセのなさ、調理のしやすさは、回転寿司やグローバル市場において圧倒的な強みを発揮しています。高級寿司店が扱わないからといって、寿司ネタとして劣っているわけではありません。
つまり、サーモンが高級寿司店に出てこない理由は、優劣の問題ではなく、TPOの問題です。江戸前寿司の文脈で評価されにくいだけであり、現代の寿司ビジネスや世界の寿司文化においては、欠かせない存在になっています。
このように寿司は一枚岩の文化ではありません。高級寿司、町寿司、回転寿司……それぞれが異なる価値観と役割を持ちながら共存しています。サーモンは、その中で最も現代的で、最もグローバルな寿司ネタの一つと言えるでしょう。
この記事は、『寿司ビジネス』(ながさき一生/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。
著者プロフィール:
ながさき 一生 1984年、新潟県糸魚川市にある「筒石」という漁村の漁師の家庭で生まれ育ち、家業を手伝いながら育つ。2007年に東京海洋大学を卒業後、築地市場の卸売企業に就職し、水産物流通の現場に携わる。その後、東京海洋大学大学院で魚のブランドや知的財産の研究を行い、2010年に修士課程を修了。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
高級寿司と回転寿司は何が違うのか 同じ魚なのに“味に違い”があるワケ
1食何万円もする高級な寿司もあれば、1食1000円以内で済んでしまう回転寿司のような安い寿司もあります。同じ寿司であるのに、なぜここまで差が生じてしまうのでしょうか。
同じ魚でも値段が違うのはなぜ? 普通のサバと関サバで10倍ほどの差
同じ魚でも値段が違うのはなぜでしょうか。スーパーで売られているサバは、安い時なら1尾400円ほどで買えますが、ブランドサバの「関サバ」ともなれば、1尾4000円以上もしますが、なぜ?
「サンマが食べられなくなる」は本当か よく言われる要因は3つ
漁業の世界では、「魚が獲れなくなった」という話をよく耳にします。ここのところ続いている「サンマの不漁」については……。
豊洲市場に人が集まっているのに、なぜ築地場外市場は今もあるのか
豊洲市場には、日々人が集っています。一方、築地場外市場にもたくさんの人が集まっています。豊洲市場移転の際、「築地がなくなる」という声を聞いたことがあるような……。
「新鮮な魚」「とれたて」をアピールする店が、信用できない理由
