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年間「11万時間」削減を社員が実感 クレディセゾンが“AI活用のゴールを決めない”理由(1/3 ページ)

クレディセゾンが3500人を超える従業員にChatGPT Enterpriseを配布して半年。業務時間の削減効果は社員の申告ベースで年換算11万時間に上る。華々しい数字面での成果に加えて、何より変わったのは「組織のOS」だという。

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 クレディセゾンの役員会に異変が起きた。AIで自動生成した執行報告資料が登場したのだ。専務執行役員CDO兼CTOの小野和俊氏は2月19日に実施した説明会で「資料作成はこの1カ月で人間の仕事ではなくなった」と言い切る。

 2025年9月から、3500人を超える従業員にChatGPT Enterpriseを配布して約半年。業務時間の削減効果は社員の申告ベースで年換算11万時間に上る。月間メッセージ数はChatGPT Enterpriseだけで約36万件。同社では業務によってさまざまなAIツールを使い分ける「マルチAI」の体制が構築されつつあり、実際の利用はもっと多いと考えられる。


ChatGPT Enterprise導入から半年。アカウント保有者3512人、MAU89%、月間メッセージ約36万回(2026年1月時点)という高い定着率を記録している(提供:クレディセゾン、以下同)

 「全社員AIワーカー化」という目標を掲げるクレディセゾン。華々しい数字面での成果に加えて、何より変わったのは「組織のOS」だという。

参考:生成AIで「計300万時間」の削減へ クレディセゾンが挑む全社員AIワーカー化の現実解

 同社はどのようにAIを活用し、非IT人材を含めた全従業員のAIワーカー化をどう広げてきたのか。戦略と現状の手ごたえを聞いた。

月間メッセージ数「36万回」 年間11万時間の削減を社員が実感

 国内社員約3600人強のうちChatGPT Enterpriseのアカウント保有者は3512人、月に1回以上使うアクティブユーザーは89%に達する。月間メッセージ数はChatGPT Enterpriseだけで約36万件、1人当たり1日約5回の頻度だ。

 業務時間の削減効果は社員の申告ベースで年換算11万時間、OpenAIの公表指標をもとにした理論値では約15万時間になる。「申告と理論値がこれだけ近ければ、大きくズレた数字ではないと思っている」と小野氏は話す。


クレディセゾン 専務執行役員CDO兼CTOの小野和俊氏

 この取材のために小野氏が用意したプレゼン資料は、GoogleのNotebookLMで自動生成したものだ。事務局が作成した元資料をPDFに変換してNotebookLMに投げ込み、4パターンのスライドを同時生成。気に入ったページを切り貼りして仕上げたという。

 所要時間は約40分。「資料作成はもうほぼ人間がやることはなくなった」と小野氏は話す。

「理想を掲げ、逆算で現状を変える」方法に限界を感じた

 全社員へのChatGPT Enterprise配布と同時に、クレディセゾンが掲げたのは全社員AIワーカー化という目標だった。ただし、その実現へのルートは、多くの企業が選びがちなアプローチとは異なるものだった。

 DXやAI導入の文脈でよく語られるのが、理想の姿(To-Be)を先に描き、そこから逆算して現状を変えていくバックキャスト型の改革だ。だが小野氏はこの方法に限界を感じていた。

 「総合職の社員に『AIを前提に業務を再設計してほしい』と言っても、『そんなこと言われましても……』となる。それは当然の反応だと思う

 水泳を習うのと同じだ、と小野氏は続ける。クロールの泳ぎ方をプールサイドで説明しても、身体では覚えられない。水に入り、手で水をかいて重みを感じて初めて、どう動けば前に進むかが分かる。

 そこで同社が選んだのが、「As-Is」──現状の業務をそのまま維持しながらAIを差し込むアプローチだ。To-Beからのバックキャストを最終目標としながら、そこへの最短ルートとしてAs-Isからのフォーキャストを選んだ。理想より先に、現場の体験を作る戦略だ。

 心理的なハードルを下げる工夫も徹底した。ある部署では「新春 AIマンガ書き初めコンテスト」を開催した。年末年始の思い出を画像生成AIで描いて競うという企画で、業務改善とは無関係のテーマをあえて選んだ。誰でも参加でき、失敗しても困らない。「自分でも使えると分かれば、次から業務で使ってみようという気になる」──その感覚を体験させることが、定着への第一歩だった。


年末年始の思い出を生成AIで描くコンテストを社内開催。業務と無関係なテーマを選ぶことで、AIへの心理的ハードルを下げた

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