DXを阻む「IT部門への丸投げ」 マクニカが解体した「発注者と請負人」モデル(2/3 ページ)
日本企業のDXが思うように進まないのはなぜか。多くの企業では、現場とIT部門が「発注者」と「請負人」に分かれたまま、部分最適を積み重ねている。マクニカはこの構造そのものにメスを入れた。同社の「構造から変えるDX」の実装プロセスに迫る。
「ハブ組織」は何を変えたのか
Digital Execution Factoryでは、具体的に次のようなプロセスでDX事例を実装している。
従業員は、日々の業務で感じた課題やアイデアを専用システムに登録する。登録された案件をDigital Execution Factoryのメンバーが、期待される削減時間や費用対効果(ROI)に基づき、実行すべき価値があるかどうかを厳格にスクリーニングする。
この選別を経て採択された案件について、現場の担当者と密に連携し、開発方針の策定や最適なツールの見極め、開発を進めていく。
さらに、リリース後も実効性を担保する取り組みを続ける。現場とDigital Execution Factoryが協力して保守にあたるだけでなく、四半期ごとに利用状況のモニタリングを実施。システムが活用されているかを追跡し、当初想定した効果を生み出せないもの、使われなくなったものは、迷わず「捨てる」。
この継続的な新陳代謝こそが、DXを「ツールを導入して終わり」にしない鍵となっている。
開発未経験の社員が生んだ「生成AIプラットフォーム」
社内からは多くのアイデアが寄せられており、これまでに実施したプロジェクト数は約40件に上る。
具体的な事例の一つに、社内で開発した「生成AIプラットフォーム」がある。「生成AIプラットフォーム」は、業務目的に応じて最適なAIエージェントを選択できる基盤だ。一般的なチャット型AIではプロンプトの作成がユーザーの負担となりがちだが、本プラットフォームでは「Webでの情報収集・分析」「社内データの活用」「翻訳・要約」など、特定業務に最適化されたエージェントを用意。複雑な指示を入力する必要はなく、ボタン一つで業務を完結できる。
現在、全従業員の約3分の1が活用しているという。
「生成AIプラットフォームの発案者は『プロジェクトマネージャーとしてクライアントに向けたAIツールの導入経験は豊富だが、開発経験はない』という従業員でした。従業員が考えて、実装に至ることに、この取り組みの意義を感じています」(安藤本部長)
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