DXを阻む「IT部門への丸投げ」 マクニカが解体した「発注者と請負人」モデル(1/3 ページ)
日本企業のDXが思うように進まないのはなぜか。多くの企業では、現場とIT部門が「発注者」と「請負人」に分かれたまま、部分最適を積み重ねている。マクニカはこの構造そのものにメスを入れた。同社の「構造から変えるDX」の実装プロセスに迫る。
現場が必要なシステムの要件を作成し、IT部門が黙々と作業する──。現場とIT部門が「発注者と請負人」の関係になっていることが、日本企業のDXを阻む最大の壁となっている。
半導体やサイバーセキュリティ関連の事業を展開するマクニカも、そのような課題に直面していた。全社横断でDX推進プロジェクトを立ち上げても、プロジェクトが終わると施策が立ち消えてしまう。そんな状況を打破すべく、同社はDXに特化した新組織を立ち上げた。
「ツールを入れて満足」という甘えを捨てて、成果、費用対効果を追い続ける仕組みをどう実装したのか。マクニカの取り組みから見えてきたのは、DXを素早く継続的に実装するための「仕組み」と「マインドセット」の重要性だった。
DXを停滞させる“見えない壁”の正体
同社が本格的なDXに着手したのは約3年前。当初は、翻訳ツールやスケジュール調整ツールといった、身近なデジタル活用からスタートした。
マクニカホールディングス執行役員CIO(最高情報責任者)兼マクニカIT本部の安藤啓吾本部長は「まずはデジタルで業務が便利になる感覚を社員に持ってもらうこと」を優先したと振り返る。
その後、各部門から約20人の代表者を集めた全社的なDX推進プロジェクトを立ち上げ、半年間にわたって現場の課題をデジタルで解決するための議論を重ねた。プロジェクト自体は成果を上げたものの、終了後にメンバーが各現場へ戻ると、取り組みは次第に停滞していった。
会社としてDXを推し進めるには、いつでも簡単に、素早く実行できる「環境」と「仕組み」が不可欠だ。この経験から同社は、DXの課題を集約し、継続的に活動する“ハブ”となる組織が必要だと判断。DX組織「Digital Execution Factory」の立ち上げに踏み切った。
Digital Execution Factoryは、社内のIT部門と、社外向けにDXコンサルティングを提供する部門の2チームが協力して立ち上げ、約20人で構成されている。その特徴は、単発のツール導入を支援するのではなく、社内でDX事例を継続的に生み出す“フレームワーク”を提供する役割を担っている点だ。
従来、各事業部が現場で必要なシステムの要件をIT部門に伝え、それを受けてIT部門が開発する「発注者と請負人」の関係になりがちだった。こうした構図では、各部門が自業務の効率化を進める一方で、組織横断の視点は育ちにくく、縦割り構造による部分最適化が進んでいく。
安藤本部長は「この関係性ではDXは継続しない」と断言する。
そこで、課題を提示した現場の従業員とDigital Execution Factoryのメンバーが連携し、共同でシステム開発などに挑むことで、従業員が自ら課題を解決するスタイルへとマインドセットの転換を促している。
Digital Execution Factoryの設立には、主に以下4つの狙いがある。社内の課題やアイデアを集約することで、これらの実現を目指す。
- 生産性の向上:基盤の活用やシステム機能の共通部品化を進めることで、開発効率を高める
- DX人材の育成:各部門において中心的な役割を担う「DXコア人材」の育成を支援する
- ノウハウの蓄積・共有: 個々の経験を形式知化し、組織全体で共有・蓄積できる仕組みを構築する
- ガバナンスの強化: 開発プロセスの整備と共通基盤の導入により、全社的なガバナンス体制を強固にする
特筆すべきは、生産性向上や人材育成といった“攻め”だけでなく、ガバナンス強化という“守り”にも機能している点だ。
個々の従業員が独断で動くと、社内で管理できていない“野良アプリ”などの増殖を招く。一元的なハブを通すことで、全社共通のセキュリティ基準を担保している。
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